2019 Fiscal Year Research-status Report
血小板が関与する新たな肺線維化機構の解明と治療標的としての可能性
Project/Area Number |
19K08834
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
築地 長治 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (20710362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 克枝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10324211)
佐藤 篤靖 京都大学, 医学研究科, 助教 (30706677)
佐藤 晋 京都大学, 医学研究科, 助教 (40378691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血小板 / 特発性肺線維症 / CLEC-2 / Pdpn |
Outline of Annual Research Achievements |
肺発生において血小板活性化受容体CLEC-2とそのリガンドPdpnの相互作用はalveolar duct myofibroblastの分化に重要だが、肺胞形成後には当該細胞は消失してしまう。我々は、不適切なCLEC-2/Pdpnシグナルの活性化によりmyofibroblastが成体肺で分化することが肺線維化の一因になるのではないかと考えた。そこで、ブレオマイシンによる特発性肺線維症のモデルマウスにおいて血小板CLEC-2を消失させたところ、体重減少と死亡率の改善が認められた。本研究では、当該モデルマウスについて、さらに詳細な解析を進めた。 ①肺線維化レベルの定量:肺線維化の最も重要な評価項目にコラーゲン産生亢進があるが、コラーゲンに特徴的なアミノ酸のハイドロキシプロリンを定量することにより推定できる。分担研究者である佐藤篤靖氏の指導の下、当講座にて当該定量法を確立した。ブレオマイシンにより肺線維化を誘導したCLEC-2欠損マウス及びコントロールマウスでハイドロキシプロリン定量を実施したところ、CLEC-2欠損マウスで有意なコラーゲン産生の抑制が認められた。以上よりCLEC-2欠損による肺線維化マウスの生存延長や体重減少軽減は肺線維化の抑制に起因することが強く示唆された。 ②CLEC-2欠損マウスモデルの問題解決:本研究では、成体で血小板CLEC-2を後天的に欠損させるためにCLEC-2抗体投与という方法を実施している。通常CLEC-2抗体を1週間に1度の投与することで30日程度効果が維持できる。しかし、2019年7月頃からなんらかの原因で有効期間の短縮が起こり、肺線維化モデルの実施期間(約25日)の途中でCLEC-2欠損状態が維持できなくなるという問題が発生し、その解決にかなりの時間を要した。現在は解決後のロットについて再現性を確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CLEC-2抗体投与によるCLEC-2欠損マウスではブレオマイシン誘導性の肺線維化が有意に軽減するという重要なデータを得ることができた。しかしながら、実施予定であった特殊染色、呼吸機能測定、サイトカイン定量に関しては、CLEC-2抗体によるCLEC-2欠損維持期間の短縮という問題が発生しっため、サンプル自体が準備できなかった。当該問題が2019年7月に発生し、ハイブリドーマの培養条件、抗体精製条件に関する問題の洗い出しに加え、ハイブリドーマのリクローニングなども行い、その解決におよそ半年を要した。抗体の品質が十分確保できる条件を確立し、現在CLEC-2抗体投与による肺線維症の軽減の再現実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
CLEC-2抗体の有効期間短縮という本研究の根幹に関わる問題を解決するために、リクローニングや培養条件、精製条件を検討した結果、有効期間が以前と同等かそれ以上の高品質な抗体を作製することが可能となった。現在CLEC-2抗体投与による肺線維症の軽減の再現実験を行っているが、予想される結果が見込める状態になっているため、今後は当初の計画の通り、病理学的解析と遺伝子発現やサイトカインの発現解析、呼吸機能解析を行っていく予定である。同時に今年度使用予定であるCLEC-2のリガンドPdpnの組織特異的欠損マウスの導入やin vitro(培養細胞)での実験の準備を進める。
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