2020 Fiscal Year Research-status Report
血小板が関与する新たな肺線維化機構の解明と治療標的としての可能性
Project/Area Number |
19K08834
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
築地 長治 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (20710362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 克枝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10324211)
佐藤 篤靖 京都大学, 医学研究科, 助教 (30706677)
佐藤 晋 京都大学, 医学研究科, 助教 (40378691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血小板 / 特発性肺線維症 / CLEC-2 / Pdpn |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、肺発生において血小板活性化受容体CLEC-2とそのリガンドPdpnの相互作用がalveolar duct myofibroblastの分化を通じて正常な肺呼吸に寄与していることを明らかにしたが、出生後成長に伴って当該細胞は消失してしまう。我々は、成体において不適切なCLEC-2/Pdpnシグナルの活性化が肺線維化の原因となるmyofibroblastを生みだし、線維化を増悪させるではないかと考えた。そこで、ブレオマイシンによる特発性肺線維症のモデルマウスにおいて抗CLEC-2抗体によって血小板CLEC-2を消失させたところ、体重減少と死亡率の改善およびコラーゲン量の減少が認められたものの、この実験系には方法上の問題があることがわかった。通常は週1回の一定量の抗体投与で血小板数を変化させることなく血小板CLEC-2欠損を1か月ほど維持できるが、ブレオマイシン投与モデルではその実施期間(25日程度)の中盤から週1回の投与ではCLEC-2欠損状態を維持できなくなることが判明した。血小板CLEC-2欠損が不十分な状態で抗CLEC-2抗体を投与すると一過性の血小板減少が起こるため、抗CLEC-2抗体による肺線維化軽減効果が血小板CLEC-2欠損と血小板減少どちらに起因するのか判別することができない。そこで、ブレオマイシン投与モデルマウスにおいて抗CLEC-2抗体による血小板CLEC-2欠損状態のチェックを頻繁に行い、血小板CLEC-2欠損状態が確実に維持した状態で肺線維化軽減効果を検証した。結果、肺線維化軽減効果は認められなかったため、抗CLEC-2抗体による肺線維化軽減効果は、血小板CLEC-2欠損ではなく血小板減少に起因する可能性が示唆された。これらの問題解決および原因究明にかなりの時間を要したが、現在は血小板自体の重要性についての解析に切り替え計画を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗CLEC-2抗体による肺線維化軽減効果の原因が、血小板CLEC-2欠損ではなく、想定外に起こっていた血小板減少によるものだった可能性が示唆された。本病態モデルは作製に1か月程度を要するため、再現実験や原因究明にかなりの時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予想していた血小板CLEC-2の肺線維化増悪機構への関与の可能性が考えにくくなったため、研究計画の大幅な変更が必要となった。しかしながら、血小板自体が肺線維化増悪に関与している事実は変わらないことから、最終年度では複数の血小板減少方法や抗血小板剤による肺線維化軽減効果を検証する実験を行う。
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