2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K08860
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田所 優子 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (00447343)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / 自己複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
食生活の異常は肥満や生活習慣病などの原因となるが、造血幹細胞に対する影響については十分理解されていない。申請者は最近、高脂肪食摂取による腸内細菌叢の変化が造血幹細胞の自己複製能調節機構を破綻させることを見出した。本研究では食餌によって変化する腸内細菌由来代謝産物による造血幹細胞の恒常性維持機構について解明することを目的とする。目的達成のために、食餌の違いにより変化する腸内細菌由来代謝産物の造血幹細胞に及ぼす影響と分子メカニズム、および、加齢に伴う造血幹細胞障害への関与を明らかにする。本研究により食餌および代謝産物による幹細胞機能の調節が可能となることを目指す。 令和元年度は、食餌性腸内細菌叢由来メタボライトの探索と、造血幹細胞におけるアクチン動態制御とERKシグナル制御の調節について解析を行った。メタボライトの探索について、通常食および高脂肪食を摂取したマウスの血漿を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析法により測定した。その結果、通常食に比べて、高脂肪食摂取で増加するメタボライト1種類と減少するメタボライト1種類を同定した。現在、これらのメタボライトをマウスに投与し、造血幹細胞に対する影響を解析している。その中で、高脂肪食摂取で増加するメタボライトの投与において、造血幹細胞におけるアクチン重合制御とERKシグナル活性化の解析を行った。その結果、このメタボライトの投与によって、アクチン重合制御は低下し、ERKシグナルは活性化していた。さらに造血幹細胞の機能を解析したところ、幹細胞機能は低下していた。令和元年度の研究成果により、高脂肪食で変動するメタボライトに造血幹細胞の機能制御に作用するものが存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、食餌によって変化するメタボライトの中で造血幹細胞の機能制御に関与する候補メタボライトを同定し、それがアクチン重合制御とERKシグナルに作用することが観察された。さらに、それが実際、造血幹細胞の機能に影響していることが示された。そのため、当初の計画がおおむね達成されており、総じて順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、高脂肪食以外の食餌についてのメタボライト測定、およびニッチ細胞への影響に関する解析を進めていく。また、食餌性腸内細菌叢由来メタボライトによる幹細胞エイジングへの影響についても、解析を進める。
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