2019 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞抗原ESAMの欠損が胎生期に致死的な赤血球造血不全をきたすメカニズム
Project/Area Number |
19K08863
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 智朗 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60747517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴山 浩彦 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (60346202)
横田 貴史 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (60403200)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / 血管内皮細胞 / ESAM / 胎仔肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
ESAMホモ欠損胎仔は胎生15.5日以降に高率に死亡した。胎生14.5日ESAM欠損胎仔肝では血球系細胞数、とりわけ造血幹細胞(HSC)数が著明に減少していた。胎生14.5日ESAM欠損胎仔肝由来のHSCは赤血球系コロニーであるBFU-E内での成体型グロビン遺伝子(Hba,Hbb-b1)、Alas2遺伝子の発現が有意に低下していた。また、移植実験においても、ESAM欠損胎仔肝HSCはヘモグロビン合成能が低下していた。野生型、ESAM欠損胎仔肝それぞれから分取した胎生14.5日HSCにおける遺伝子発現をRNA-seqにより網羅的に比較したところ、ESAM欠損胎仔肝HSCでは成体型グロビン遺伝子、Alas2の発現が著明に低下していた。 次に、造血発生における血管内皮細胞のESAMの影響を明らかにするため、条件付きESAM欠損マウスを作製した。HSC特異的欠損モデルとして用いられるVav-Creトランスジェニックマウスと独自に作製したESAM-floxマウスの交配により得られたVav-Cre・ESAMflox/flox胎仔は、ESAMホモ欠損胎仔と比較して有意に死亡率が低かった。詳細に解析すると、Vav-Cre・ESAMflox/flox胎仔肝では、HSCのみならず血管内皮細胞のESAMも部分的に欠損し、血管内皮細胞のESAMの残存割合とHSC数に比例関係があることがわかった。血管内皮細胞特異的にESAMを欠損させたマウスの胎仔肝から採取した実質/間質細胞を支持細胞として、野生型マウスの胎仔肝から採取したHSCとの器官培養を行なったところ、野生型の血管内皮細胞を支持細胞として用いた場合と比較して、産生される造血幹・前駆細胞数とCD45陽性血液細胞数が有意に減少した。以上から血管内皮細胞のESAMも造血発生に重要であり、造血幹細胞の維持と分化の誘導に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画として、ESAM欠損マウス、条件付きESAM欠損マウスを用い、胎生期造血において、ESAMが造血幹細胞、血管内皮細胞それぞれでどのような機能的意義を有するかを明らかにすることを目指した。まず、独自に作製したESAM-floxマウスとVavCreトランスジェニックマウスを交配し、Vav-Cre・ESAMflox/floxマウスを作製した。そして、ESAM欠損マウス、Vav-Cre・ESAMflox/floxマウスを用いることで、造血幹細胞のESAMが成体型ヘモグロビン合成に、血管内皮細胞のESAMが造血幹細胞の維持・分化誘導に寄与していることを示した。 また、それらの結果に関して論文報告を行った(Stem Cell Reports. 2019 Dec 10;13(6):992-1005.)。 以上の状況から、本研究はおおむね当初の計画通りに研究が進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮細胞内においてESAMはアダプタータンパクであるMembrane Associated Guanylate Kinase, WW And PDZ Domain Containing 1 (MAGI-1)に直接結合し、Rhoファミリーの活性化を誘導することが報告されている。しかし、造血幹細胞のESAMが共役する分子、ESAMを介した細胞内シグナル経路は未だ明らかではない。それらを解明にするため、胎生14.5 日の野生型胎仔の造血幹細胞を用いて、cross-linking (Hegen M, et al. Immunology 1997) により造血幹細胞内にESAMを介した細胞内シグナルを入れ、変動する遺伝子をRNA- seqにより解析する。野生型、ESAM欠損胎仔肝それぞれから分取した胎生14.5日HSCにおける網羅的遺伝子発現比較の結果と合わせ、赤血球造血に関連が深いと考えられる遺伝子を選別する。選別した遺伝子に関して、過剰発現実験およびノックダウン・阻害分子を用いた抑制実験を、造血幹・前駆細胞株であるFDCP-mixやEML-C1、あるいは野生型マウス・ESAM欠損マウスから抽出した造血幹細胞を用いて行う。
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Research Products
(1 results)