2020 Fiscal Year Research-status Report
小児白血病の発症プロセスに基づく発症・再発予防法開発への基礎研究
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19K08866
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
江口 真理子 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (40420781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 峰斉 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (50420782)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MLL融合遺伝子 / 白血病 / iPS細胞 / 遺伝的背景 |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病形成の1st hitであるMLL融合遺伝子形成のメカニズムを解明するために、MLL融合遺伝子陽性白血病における遺伝的背景の関与について、iPS細胞モデルを用いて解析を行った。 MLL融合遺伝子陽性の白血病患者およびコントロール(健常成人)の末梢血よりiPS細胞を樹立した。このiPS細胞を造血細胞へ分化させ骨髄系の造血細胞やリンパ球への分化能およびや増殖能を検討した。iPS細胞の樹立に際してはMLL融合遺伝子自体の影響を排除するため、治療後で、白血病細胞の消失を確認出来た寛解時の末梢血検体を用いた。一部の症例ではiPS細胞の作製に十分な検体が得られなかったために、初診時の末梢血検体を用い、iPS細胞作成後にMLL融合遺伝子を有するiPS細胞クローンを除外し、正常細胞由来のiPS細胞クローンを選別して解析に用いた。これらiPS細胞を用いて、それぞれの遺伝的背景を有するiPS細胞由来の造血前駆細胞の増殖能や分化能を検討した。白血病患者由来のiPS細胞からは、非白血病のコントロールのiPS細胞と比較して、ほぼ同じ割合でCD34陽性の造血前駆細胞が産生されていた。また得られた造血前駆細胞の分化・成熟能や増殖能に変化は認められなかった。Bリンパ球への分化実験により、CD19陽性、IL7受容体(CD127)陽性のBリンパ球前駆細胞への分化をコントロールiPS細胞とともに、患者検体由来のiPS細胞でも確認できた。このCD19陽性リンパ球前駆細胞のIGHクローン解析により、iPS細胞由来のリンパ球前駆細胞はポリクローナルなIGH再構成クローンを形成する能力を保持していることが示された。 今後、二次性白血病の原因薬であり、MLL遺伝子の切断を引き起こすことが知られているトポイソメラーゼII阻害剤であるEtoposideの造血前駆細胞の増殖・分化に与える影響を詳細に検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
白血病患者およびコントロールの末梢血を用いたiPS細胞の造血細胞への分化実験系の確立に当初計画よりも時間を必要としたため。
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Strategy for Future Research Activity |
MLL融合遺伝子陽性白血病における白血病化への1st hitの遺伝子異常であるMLL融合遺伝子の形成メカニズムを解明するために、患者iPS細胞由来造血前駆細胞において、トポイソメラーゼ阻害剤や放射線等の刺激によるDNA切断・修復異常の有無をコントロールと比較し、遺伝的背景の関与について検討する。また形成された造血細胞の腫瘍化能をin vitroでの増殖能や分化能、および免疫不全マウスへの移植実験(ヒト化マウス)により判定する。 さらに小児ALLの患者検体を用いて、症例毎にat risk多型の有無を確認後に、症例特異的な遺伝的背景を保持したiPS細胞を樹立する。iPS細胞の樹立に際しては遺伝的背景のみを反映する治療後の寛解時の末梢血検体を用いる。このiPS細胞を用いて、小児ALLの発症に関与する遺伝的背景が白血病の発生母地である造血幹細胞・前駆細胞にどのような影響(表現型・遺伝子発現パターンの変化等)を与えるのか明らかにする。患者細胞を用いて樹立したiPS細胞を造血系へ分化させ、遺伝的背景を有する造血前駆細胞を得る。このiPS細胞を用いて遺伝子発現アレイにて遺伝子発現パターンを解析する。白血病を発症せずかつrisk alleleを保持しないコントロール症例から樹立されたiPS細胞を対照として比較検討することにより、患者iPS細胞由来の造血前駆細胞で発現異常を認める遺伝子(群)およびパスウェイを同定する。患者およびコントロール検体由来のiPS細胞から得られた造血前駆細胞の網羅的な遺伝子発現パターンを比較することにより、白血病発症のat riskにある遺伝子発現パターンの把握と、関与する遺伝子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:白血病患者およびコントロールの末梢血を用いたiPS細胞の作製および分化実験に当初計画よりも時間を必要とした、および免疫不全マウスを用いた実験が遅れ、マウスの購入数が当初計画より少なくなったため、研究費の使用額が少なくなった。また学会のWeb開催などにより、成果発表に必要な旅費などの経費が必要なかったため、最終的に研究費に次年度使用額が生じた。 使用計画:今年度も当初の研究計画通り、実験を継続する予定である。
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Research Products
(15 results)