2020 Fiscal Year Research-status Report
単球で合成されるプロトロンビンが関与する抗リン脂質抗体産生機序の解明
Project/Area Number |
19K08876
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤枝 雄一郎 北海道大学, 大学病院, 助教 (70790872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗リン脂質抗体症候群 / 抗原提示 / プロトロンビン |
Outline of Annual Research Achievements |
抗リン脂質抗体症候群患者(APS)から採取した末梢血をFicoll密度勾配遠心法でヒト末梢血単核球 (PBMC)を分離し、Pan Monocyte Isolation Kit, human (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)を用いて、磁気細胞分離技術でnegative selectionを行った。分離した単球を、サイトスピンを用いてスライドに単層塗抹標本を作成し、免疫蛍光染色にて細胞表面のプロトロンビンの発現を観察するとともに、フローサイトメトリーで細胞表面のプロトロンビンの発現を観察した。細胞表面蛋白の検出には当科で作成したホスファチジルセリン依存性抗ヒトプロトロンビン抗体(aPS/PT)を使用した。 免疫蛍光染色では健常者および一部のAPSではHLAの発現はみられるものの、PTの発現は認めなかった。一方でHLAとPTの発現が確認できる患者も存在した。フローサイトメトリーにおいても同様の結果であった。またAPS患者においてワルファリン(Wf)非内服下と内服下でフローサイトメトリーを行ったところ、Wf非内服下ではaPS/PTが結合し、Wf内服下ではaPS/PTの結合を認めなかった。以上から、APS患者においてプロトロンビン発現単球(PT-mono)が存在し、またWfによってプロトンビンの発現が抑制されうることが示された。 今後はPT-Monoが、血栓形成に寄与しているかを明らかにするために、PT-Monoの凝固能およびaPS/PT結合時の組織因子の発現の有無を確認する。PT-Monoと通常単球の遺伝子発現の違いを網羅的解析し、PT-Monoに特異的な遺伝子を同定し、PT-Monoの発現を抑制するタンパクを検索する。以上の発見はAPSにおける新規治療薬の開発につながると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワルファリンがAPSに有効である機序を抗原提示の観点から明らかにできる可能性があること、今後APSにおける新規治療薬の開発につながると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はPT-Monoが、血栓形成に寄与しているかを明らかにするために、PT-Monoの凝固能およびaPS/PT結合時の組織因子の発現の有無を確認する。PT-Monoと通常単球の遺伝子発現の違いを網羅的解析し、PT-Monoに特異的な遺伝子を同定し、PT-Monoの発現を抑制するタンパクを検索する。
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