2021 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチにおけるヒストンメチル化酵素の機能異常の解明及び治療標的としての確立
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19K08888
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
荒木 靖人 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (10580839)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リウマチ学 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
関節リウマチ(RA)は、関節に炎症を起こす原因不明の自己免疫疾患であり、完全に治癒する事は難しい。近年、Tumor Necrosis Factor (TNF)阻害薬などの生物学的製剤が開発され、RAの治療に多大な進歩があったが、いまだ一部のRA患者には無効であり、感染症などの重篤な副作用を認め、非常に高価な治療である。そのため、RAのより新たな治療法を開発する事が切望されている。本研究では、エピジェネティクス制御異常の観点からRAの病態を解明し、新規治療への足がかりを得る事を目的とする。研究代表者らはRAの滑膜線維芽細胞 (SFs)においてヒストンメチル化の異常が起きている事をこれまで報告してきた。ヒストンメチル化の異常を引き起こす原因を調べるためにヒストンメチル基転移酵素の発現を解析したところ、ヒストンH3K4のメチル基転移酵素の一つであるMLL1の発現がRASFsにおいて上昇していた。MLL1が転写を制御している遺伝子を調べるためにsiRNA法によりMLL1の発現を抑制したところ、いくつかのサイトカインやケモカイン (IL-6、IL-15、CCL2、CCL5、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CX3CL1)の発現が低下したため、これらの遺伝子がMLL1の標的遺伝子と考えられた。さらに、これらの遺伝子においてMLL1の発現抑制にてプロモーター領域のH3K4me3の低下を認めた。これらの事から、MLL1はヒストンメチル化を介してサイトカインやケモカインの遺伝子の転写を制御している事が示唆された。さらに、MLL1阻害剤であるMM-102にてRASFsを処理したところ、CCL2、CCL5、CXCL9、CXCL10、CXCL11の発現が低下し、これらのプロモーター領域のH3K4me3の低下も見られた。これにより、MLL1はRAの治療標的に成りうる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MLL1阻害剤を用いて関節リウマチの滑膜線維芽細胞への影響を調べる際に、いくつかの阻害剤を用いて濃度、処理時間などの最適な条件を検討するのに時間を要したため。最終的にはMM-102というMLL1阻害剤で最適濃度、最適処理時間を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
MLL1阻害剤であるMM-102を用いて、RA動物モデルを用いて、関節炎の治療実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
MLL1阻害剤を用いた関節リウマチの動物モデルにおける治療実験の開始が遅れたため、その実験に用いる予定の研究費が残ってしまった。次年度に上記の治療実験を予定している。
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Research Products
(9 results)