2020 Fiscal Year Research-status Report
Layilinを中心とした関節リウマチの滑膜細胞増殖・活性化の機構解明
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19K08896
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
加藤 智啓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80233807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ライリン / 関節リウマチ / 上皮間葉移行様変化 / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は「Layilinを介したTNF-α誘導性上皮間葉移行(EMT)様変化がRA滑膜細胞の異常増殖の本態である」との仮説を立てた。本研究では、Layilin遺伝子欠損マウス及びヒト滑膜細胞等を用いて上記仮説を実証し、Layilinを標的としたRA滑膜増殖抑制治療法の可能性を探る。 関節滑膜細胞におけるLayilinのEMT様変化との関連を含めその機能を明らかにするためin vitro及びin vivoの両面から検討した。 In vitro研究で、浸潤性を示す神経膠腫由来の細胞株A172細胞で、Layilinの発現抑制によりEMT誘導転写因子であるSNAI1が減少し、浸潤能が低下することを報告した(申請者ら論文(Kaji T, 2019))。これはLayilinが細胞浸潤能を増強することを示している。また、293T細胞でLayilinはミトコンドリアの形状を短く保つのに必要であること、それにはCDK1の活性化とそれに続くDRP1の活性化が関与することを報告した。(申請者ら論文(Tsutiya A, 2020))。CDK1は細胞周期を亢進するため、Layilinが細胞増殖に寄与している可能性が高い。実際に数種類の細胞株でLayilinの発現を抑制すると細胞増殖が抑制された。加えて、CRISPR/Cas9法によりLayilinKO-293T細胞を樹立したが、本細胞の増殖も野生型と比較して遅かった。この点については関節滑膜細胞でも同様に検討し、関節リウマチの観点からも考察する必要がある。 in vivo研究では、CRISPR/Cas9法により作製したLayilin欠損マウスを用いて、CIA誘導実験を行った。Layilin欠損マウスの関節炎スコアは野生型と比較して有意な差は認められなかった。抗Type IIコラーゲン抗体価を測定予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Layilin依存性上皮間葉移行(EMT)様変化の観点から、Layilinの機能探索をin vitro及びin vivoの両面から検討した。In vitroに関しては、浸潤性の高い神経膠腫由来の細胞で、Layilinが浸潤能に関与していることを明らかにし、論文報告した(Kaji T, 2019)。また、細胞周期を亢進する分子CDK1の活性維持に寄与することも論文報告した(Tsutiya A, 2020)。その後、Layilinノックダウンおよびノックアウトの両方の系で、実際にLayilinが細胞増殖に寄与していることも見出した。In vivoに関しては、系統化したLayilin欠損マウスを用いたCIA誘導実験が遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、すでに我々が作製したLayilin遺伝子欠損マウス及びヒト滑膜細胞等を用いて、in vivo及びin vitroの両アプローチにより、「Layilinを介したTNF-α誘導性のEMT様変化がRA滑膜細胞の異常増殖の本態である」との仮説を実証する。 in vivoでは下記の点について、Layilin欠損マウスを用いて明らかにする。 1)Layilin欠損マウスの形態学的特徴・生化学的特徴を検討する。2)Layilin欠損マウスを用いたコラーゲン誘導性関節炎モデルの解析により、関節炎におけるLayilinの役割を明らかにする。3)Layilin欠損マウスと野生型マウスとでの、臓器・細胞における発現タンパク質の差異をプロテオミクス解析により明らかにする。4)Layilin欠損マウスのリンパ球等の増殖能、サイトカイン・抗体等の産生能を明らかにする。本年度は、特に3)4)に重点を置く予定である。 In vitroでは、主にヒト滑膜線維芽細胞・ヒト滑膜線維芽細胞株等を用いて明らかにする。5)TNF-α以外に滑膜細胞にLayilin依存性 EMT 様変化を起こす分子があるかを明らかにする。指標は形態的変化とEMTマーカーの変化を用いる。6)Layilinの上下流に位置する分子を明らかにする。7)Layilinを標的として滑膜細胞の増殖能・浸潤能を抑制することが可能であるか否かを明らかにする。8)TNF-α誘導性EMT様変化後で滑膜細胞の増殖能・浸潤能が増加するか否かを明らかにする。9)Layilinを抑制しうる分子、あるいはLayilin 経路を遮断できる分子を探索する。 以上の過程で、知的財産に相当するものは所属大学のTLO(株式会社MPO)を通して特許出願を行う。また、適時、成果を論文としてまとめ、国際的学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
その他の経費である委託研究の実験が遅れてしまい、さらにその報告書と請求書の送付が3月末になってしまったので、支払い手続きが翌年度に繰り越されてしまった。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Roles of Layilin in Regulation of Low-Density Lipoprotein Receptor in Malignant Glioma Cells.2020
Author(s)
Ushimaru S, Arito M, Tsutiya A, Sato T, Omoteyama K, Sato M, Suematsu N, Kurokawa M S, Kamijo-Ikemori A, Shibagaki Y, Kato T
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Journal Title
Journal of St. Marianna University
Volume: 11
Pages: 53-59
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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