2019 Fiscal Year Research-status Report
全身性エリテマトーデスにおける自己抗体による直接的血液脳関門破壊機序の解明
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19K08918
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
有沼 良幸 北里大学, 医学部, 講師 (30527437)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | NPSLE / 血液脳関門 / 自己抗体 / 全身性エリテマトーデス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト脳血管内皮細胞株を用い自己抗体(抗Sm抗体、抗RNP抗体)にて刺激を行ったところ、血液脳関門を形成するタイトジャンクション関連タンパクのクローディン5のタンパク発現量が減少することをが判明した。タンパク発現の現象がタンパク産生抑制もしくはタンパクの産生とは関係なく減少する(分解される)かどうかの検討のため、抗体刺激後経時的なクローディン5の定量的PCRを行った。結果として、クローディン5のPCRでの発現量は抗体刺激には依存しておらず、クローディン5の発現量の低下は分解亢進の結果である可能性が示唆された。これは、当初の仮説に一致するものであった。そのためタンパクの分解がどのように生じているかを検討するために、細胞外マトリックスを分解するMMPsに着目した。同様に、抗体刺激後タイトジャンクション関連タンパクを分解すると報告のあるMMP2およびMMP-9について定量的PCRを行った。その結果、MMP-9は抗体刺激により変化しないものの、MMP-2の発現が抗Sm抗体にて亢進する可能性があった。MMP-2は細胞外にて働くこと、前駆体が活性型に変化することでタンパク分解機能を発揮することから、細胞培養上清中のMMP-2の活性についてゲラチンザイモグラフィーにて半定量を行った。結果として、抗Sm抗体存在下ではヒト脳血管内皮細胞株からはMMP-2の産生が亢進している可能性が示された。血管内皮細胞株はあくまで培養細胞であることから、抗体刺激による血管内皮の障害検討のためHUVECを用いて同様の刺激実験を行った。クローディン5の発現量に着いては似たような現象が確認されており、詳細な検討を加えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説の証明となる自己抗体による刺激とそのアウトプットをタンパクないしはPCRでin vitro確認することができている。今後、これらが生じるメカニズムについての実験と、in vivoにおける実験での仮説証明ができる可能性があるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、自己抗体による刺激の経路、すなわち細胞表面抗原の同定が必要となる。次に、治療的介入の可能性としてMMP-2の阻害薬によるin vitroでの血液脳関門障害作用の軽減が図れるかどうかを見ることである。最終的には動物モデルに発展させ薬剤による治療介入の可能性について実験を推進する。
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Causes of Carryover |
実験計画そのものは順調であったが、再現性実験を行う回数が当初の予定より少なくなってしまったことが一番の原因と考えられる。また、とくにHUVECを用いた実験についてその細胞増殖速度が当初の予定よりも遅く、回数が重ねられなかったことが挙げられる。 次年度についてはHUVECを用いた再現性実証実験を行うこと。MMP-2阻害薬を用いて、クローディン5分解がブロックされることにより、タンパク発現が低下しないことを確かめる。またトランスウェルを使用し脳血管内皮細胞株とともに仮想的に脳血液関門の再現を行い自己抗体刺激による影響を見ていく。
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