2021 Fiscal Year Research-status Report
Detection of comprehensive viral infection after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation using a nanopore sequencer
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19K08933
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
河野 利恵 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (20468002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 正男 大分大学, 医学部, 教授 (10332892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノポアシークエンサー / 造血幹細胞移植 / ウイルス感染 / 細菌感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
同種造血幹細胞移植とは、「骨髄細胞を死滅させるほどの強力な前処置を施行後に他人の造血幹細胞を輸注し造血細胞の再構築をする」という治療方法である。強力な化学療法、移植片対宿主病、それを抑えるための免疫抑制剤の投与は患者さんの免疫能を大きく低下させ、様々な感染症が問題となる。今回の研究の目的は、最近開発されたナノポアシークエンサーを用いて網羅的に感染症を検出することである。 2020年度までにヒトヘルペスウイルス6型標準株を用いてナノポアシークエンサーの検出感度の確認を行った。標準株を用いた場合、定量PCR法と同等の検出感度をが確認できた。さらに臨床検体の使用を可能にするため大分大学の倫理委員会の承認を得た。 2021年度、造血幹細胞移植後t患者の全血DNAを回収後、ナノポアシークエンサーを用いて感染微の物種の同定を行った。当初予想していたウイルス種の検出はほとんど認められなかった。しかし、大量かつ多種類の腸内細菌DNAが確認された。その中にはサルモネラ、O157,赤痢菌などの病原性を持つものも含まれていた。腸内細菌の種類が多種類に及ぶことより実験操作時のコンタミの可能性は低いと考えられる。検体採取前後、患者には発熱な認められたが消化器症状は認められなかった。現時点で「臨床症状がないのにどうしてこのように大量の細菌が確認されたのか」という疑問が残る。 現在、その理由として「造血幹細胞移植時の強力化学療法による腸管細菌叢の破壊と菌交代現象」を考えている。その検証するのため「造血幹細胞移植患者全血DNAを経時的に採取」し検出される細菌群がどのように変化していくかをナノポアシークエンスを用いて解析していく予定としている。そのため現在、3名の造血幹細胞移植後患者の全血DNAを週に一度回収しており、順次解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度にラムダファージ、ヒトヘルペスウイルス6型標準株を用いてナノポアシークエンサーの検出感度の確認を行った。これにより、ナノポアシークエンサーの検出感度が定量PCRとほぼ同程度の感度であることを確認した。このデータをもとに2020年8月第117回内科学会総会「医学生、研修医のための内科学会ことはじめ」で医学部4年生が口頭発表を行った。2020年度に大分大学倫理員会で臨床検体使用の承認を得、実際に造血幹細胞移植後患者血液よりDNA抽出を行った。2021年度はその臨床検体を用いたナノポアシークエンサーによる解析を行った。当初予想していたウイルス種の検出は認められなかった。特に定量PCR法でアデノウイルスが検出された患者全血DNAからアデノウイルスが検出できなかった。しかし、大量かつ多種類の腸内細菌DNAが確認された。その中にはサルモネラ、O157、赤痢菌などの病原性を持つものも含まれていた。腸内細菌の種類が多種類に及ぶことより実験操作時のコンタミの可能性は低いと考えた。このデータをもとに2022年4月に第119回内科学会総会医学生、研修医のための内科学会ことはじめ」で医学部4年生が口頭発表を行った。 現時点での課題として、「1、ウイルスの検出感度が定量PCR法よりも低い 2,大量の腸内細菌検出の原因解明」の2点があげられる。これらは2022年度の課題としたい。 また、2020年度から新型コロナの流行により消耗品、特にRNA関連試薬が品薄となり予定通り入荷できなくなった。そのため、当初計画していた「ナノポアシークエンサーによるRNAウイルスの検出の検討」は思うように進展していない。区分を「おおむめ順調に進展している」としたのはそれが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に見出した課題の解決を行う予定である。 [課題1ウイルス検出感度が定量PCRより低い]特定のウイルスをターゲットとした特異的プライマー、プローブを使用する定量PCRの感度はかなり高い。それと比較して網羅的にウイするを検出するナノポアシークエンサーの感度が劣ることは十分予想していた。ウイルス標準株を使用した場合には、定量PCR法とナノポアシークエンサー法の感度に大差がなかったのに臨床検体を使用した場合にはどうして差が出るのだろうかという疑問が残る。その理由として、ウイルス標準株からDNAを回収した場合には安定して長鎖DNAが回収されるのに対して、臨床検体から回収したDNAは断片化されているのではないかと考えている。ナノポアシークエンサーにアプライできるDNA溶液の量は約40マイクロリットルである。現在、DNA回収時の濃縮率は2倍(1mlの検体から0.5mlのDNAを回収)である。今後、エタノール沈殿法や限外ろ過法を使用してDNA濃縮率を上げる予定である。 [課題2腸内細菌DNAの大量かつ多種の検出理由]造血幹細胞移植時には強力な化学療法を行う。それにより腸内細菌の菌交代現象が起こっていると考えている。その死滅した細菌DNAが血液中に流入しているためこのように大量な腸管細菌DNAが検出されたと考えている。患者に消化器症状が起こらないのは、あらかじめ投与している予防薬(抗生物質や粘膜保護剤)の効果ではないかと考えている。それを検証するため本年度、造血幹細胞移植前後の全血DNAを経時的に採取しナノポアシークエンサーで解析、移植過程で検出される細菌種がどのように変化していくのかを検証する予定である。 [課題3ナノポアシークエンスによる血中RNAの検出}試薬の不足により思う様に進展しなかった「造血幹細胞移植後の全血RNAシークエンス」も手掛ける予定である。
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