2023 Fiscal Year Research-status Report
Detection of comprehensive viral infection after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation using a nanopore sequencer
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19K08933
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
河野 利恵 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (20468002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 正男 大分大学, 医学部, 教授 (10332892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノポアシークエンサー / バクテリオファージ / ヒトヘルペス6B / 造血幹細胞移植 / 腸内細菌 / 腸管粘膜障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,ナノポアシークエンサーの精度管理:a,既知コピー数バクテリオファージからDNAを回収する。そのDNAをナノポアシークエンサーにアプライしリード数を測定する。リード数より1mlDNA溶液に含まれるバクテリオファージのコピー数を算出。実際使用したファージのコピー数とナノポアシークエンサーより算出されたコピー数を比較検討した。b,既知コピー数ヒトヘルペス6Bウイルス(ATCC株)よりDNAを回収する。そのDNAをナノポアシークエンサーにアプライしリード数を測定する。リード数より1mlDNA溶液に含まれるヒトヘルペス6Bウイルスのコピー数を算出。実際使用したヒトヘルペス6Bウイルスのコピー数とナノポアシークエンサーより算出されたコピー数を比較検討した。(結果)バクテリオファージを用いた実験では、「バクテリオファージの培養に用いた大腸菌DNAがナノポアシークエンサーの測定系(ナノポア)を占有してしまったため思うようなリード数を得ることができなかった。しかし、ヒトヘルペス6Bウイルスを用いた実験では、定量PCR法での測定結果と比較しても遜色のないリード数を得られた。 2,造血幹細胞移植後患者から得られた血漿、全血DNAからの感染性微生物の検出 大分大学医学部附属病院で造血幹細胞移植を行った患者3名から毎週1回のEDTA採血を施行し、血漿、全血DNAを回収(倫理員会承認済み)する。ナノポアシークエンサーを用いてそのDNAに含まれる感染微生物DNAのリード数を測定し、検出できた感染微生物の種類とコピー数を確認した。(結果)造血幹細胞移植直後、患者血液より大量の腸内細菌DNAが確認された。その中にはサルモネラなど病原性のあるものも含まれていた。移植後発熱やGVHDなのが認められた患者DNAからは、良好だった患者DNAよりも多くの細菌DNAが確認された。また、ウイルスDNAは確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1,新型コロナ流行のための遅延:コロナウイルス感染症の流行のため、2020年から約2年間海外試薬が全く入ってこない状態が続いた。ナノポアシークエンサー(フロング)と試薬は、オックスフォードナノポアシークエンス社(イギリス)からの輸入になる。また、本研究に使用するキアゲンの核酸抽出キットは、コロナウイルスのPCRに用いられたため約2年間まったく手に入らない状態が続いた。さらに本研究で用いていたフィルター付きチップもコロナウイルスPCRに必要なために品薄となっていた。 実験計画では「患者検体を採取したらすぐに核酸抽出を行う」ことになっている。キアゲンの核酸抽出キットが手に入らなかったため、約2年間分の患者検体の採取が滞った。2023年度は、コロナの鎮静化に伴いキットの購入は可能になった。しかし、大分大学医学部付属病院で同種造血幹細胞移植を行う患者数は限られている。測定適応となる患者数に限りがあるため、2023年度内にナノポアシークエンサーによる測定には至らなかった。 2、ナノポアシークエンサーの技術上の問題点:a、ナノポアシークエンサーにアプライ可能なサンプル量は極めて微量(10μl程度)である。そのため、検体処理の段階でいかに濃縮するかが問題となる。b、ナノポアシークエンサーは、ウイルスDNAの検出感度が悪い。その理由としてウイルスのゲノムが細菌と比較して小さいためではないかと思っている、逆に細菌DNAの検出は優れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1,検体の採取:2023年度までに採取して測定に至らなかった検体が存在する。また、ヒト倫理員会申請の延長によって、さらに検体採取を可能とする。これらの検体の測定を行う予定である。 2,ナノポアシークエンサーにアプライできる検体量:ナノポアシークエンサーにアプライできるサンプル量は極めて微量(23.5μl)である。アプライする核酸(DNA・RNA)には、ポアを通過させるためのアダプターを付着する。付着のためにはオックスフォードナノポアテクノロジー社が開発した特殊なキットを使用しなければならない。そのため、アプライできる検体量を増加させることは不可能である。 3,2の問題を解決するため、ナノポアシークエンサーにアプライする前のDNA検体を濃縮することを考えている。現在、200μlの血液サンプルから100μlのDNAを回収、そのうちの23.5μlをナノポアシークエンサーの測定に使用している(1/2に濃縮)。子の濃縮率を上げる予定である。濃縮の方法としてa、磁気ビーズを用いた濃縮 b、回収したDNAをエタノール沈殿によって濃縮する。濃縮を行った場合には不純物の混入が問題となる(特にbのエタノール沈殿を行った場合)。不純物が次のアダプター付着反応を阻害ため、一度液体クロマトグラフィーを用いアダプター付着反応に支障がない純度が保たれているか確認してみる。 4,造血幹細胞移植後の検体(特に予後不良症例)に多数の病原性腸内細菌が確認された。当初の申請目的とは多少視点がずれるが「腸内細菌の菌交代現象が造血幹細胞移植の予後を査収するのではないか」という極めて興味深い所見である。これに関しても今度調査を進めていくつもりである。
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Causes of Carryover |
新型コロナ下でQiagenのDNA・RNA回収キットとフィルター付きチップの入荷が遅れた。そのため約2年間検体の採取ができない状態が続いた。また、ナノポアテクノロジー社のフロングも2023年度になんるまで入荷待ちの状態が続いた その間、患者検体を採取してもそれ以降の処理ができるか不明であった。患者さんの負担も考え検体(血液採取)を行わなかった。 大分大学医学部附属病院で同種造血幹細胞移植を行う患者数は20名程度である。発熱などの感染症が疑われる患者検体のみを使用することになっている。そのため、2023年度までに十分な患者数が集まらなかった。、
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