2020 Fiscal Year Research-status Report
B型肝炎ウイルスのステルス性による慢性感染成立の機序解明と阻止分子標的の創薬
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19K08937
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
坪田 昭人 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90322643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | B型肝炎ウイルス / B型肝炎 / 肝炎慢性化 / microRNA / mRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎は世界的に未だ主要な感染症であり、重大な健康問題や経済的損失をもたらしている。特に感染の慢性化には急務な対応が必要である。肝炎が慢性化してしまえば、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus, HBV)の特性上、感染肝細胞からの完全排除は困難だからである。これを克服するには、感染の慢性化阻止が有力な一つの治療戦略になる。 申請者らはヒト化肝臓キメラマウスモデルを独自に作製、そのモデルにHBVを感染させて肝組織内トランスクリプトームを解析した結果、感染直後より持続的に高発現する3つのmicroRNA(miRNA)とHBVのステルス(stealth)性を示唆する遺伝子プロファイルが得られた。 これらの知見は慢性感染の成立機序を示唆している可能性がある。慢性感染においてHBVを排除する治療がない現在、慢性化を回避する方法の確立は重要である。本研究は、in vitro及びキメラマウスを用いた感染実験により、① miRNAがHBVのステルス性にどう関与しているのか、② miRNAと標的mRNAが慢性化を阻止する分子になるのか、③ 核酸アナログ体との併用でHBVを排除できるのか、を検討し、慢性化の成立機序をmiRNA/標的mRNAを中心に解明する。これによりB型肝炎の慢性化阻止に向けた新たな分子標的の創薬が期待される。 現在、miRNAと特異的なcounterpartである標的mRNAが慢性感染への成立にどのように関与しているか、それらのinhibition/overexpressionが慢性化の成立・非成立にどの程度関与しているのか、あるいは慢性化を阻止できるのかなど、詳細に検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト化肝臓キメラマウスモデルにHBVを感染させた実験で、肝炎直後より発現が抑制されているmRNA群において、申請者らが同定した3つのmiRNAと特異的に結合するであろうmRNAをin silicoで検索した。数十以上に及ぶmRNAに対してreal-time PCRによるvalidationは完了している。そのvalidationされたmRNAとmiRNAとの特異性を確認するためにluciferase reporter assayを行ってきたが、特異性の確認ができたmRNAと再検中のmRNAがあり、現在も継続中である。 候補miRNA/標的mRNA の抗ウイルス効果と持続感染の阻止効果を、HBV 自立産生細胞株HepG2 2.2.15 やヒトprimary 肝細胞のPXB-cellsを用いて、各 mimic/inhibitor miRNA や標的mRNA のsiRNA を導入後、肝細胞内HBV DNA, cccDNA や培養上清中のHBV DNA, HBV 関連抗原を測定し、感染効率、複製効率や抗HBV 効果を繰り返し実験している。 またレンチウイルスを用いて候補miRNAを持続的にinhibition/overexpressionを行い、HBVの感染動向や動態を調べている。以上の実験系は条件設定により結果が変動するため、最適なin vitro感染系の条件設定とその意味合いの検討に時間がかかっており、結果的にやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が同定したmiRNAと標的mRNAを引き続き研究していく。現在までにvalidationしたmRNAも含めて、miRNA/標的mRNAが実際の肝細胞内でどのような生物学的意義を持っているのか、その機能について引き続き検証を行う。 同時に各々のmiRNA/標的mRNA をinhibition/overexpressionしてHBV 感染・複製効率を精査し、HBV感染の慢性化阻止について条件の最適化を検討する。また、これらのmiRNA/標的mRNAがHBV生活環のどこに、どのように作用して慢性化が阻止されるかの基礎的検討を行う。 最終的には申請者らが独自に作製したヒト化肝臓キメラマウスモデルを用いたin vivo実験系でHBV感染の慢性化阻止の検討を行う予定である。加えて、各々のmiRNA/標的mRNA のinhibition/overexpressionした場合の細胞内遺伝子変化を網羅的に解析することも考えている。
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Causes of Carryover |
過去2年間は以前から継続していた関連の研究や他の研究課題で使用していた消耗品・実験系もあり、結果的に予定の当該研究費の使用は抑えられたためである。
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