2021 Fiscal Year Research-status Report
シクロスポリン誘導体を基盤とした新規インフルエンザウイルス増殖関連因子の解明
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19K08962
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山本 典生 東海大学, 医学部, 教授 (40323703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / シクロスポリン / 宿主因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスは変異しやすく、薬剤耐性ウイルスが容易に出現するという問題があることから、新たな機序によるウイルス増殖阻害剤の開発が必要である。 従来薬とは異なる作用点を持った抗ウイルス薬候補の同定を目的として、化合物セットのスクリーニングを行ったところ、シクロスポリン(CsA)がヒットした。NFAT経路が責任経路であるかを確かめるために、FK506の抗ウイルス活性を調べたところ、増殖阻害活性は確認できなかった。この結果から、NFAT経路の抑制は、CsAによる抗ウイルス活性には関与していないことが示唆された。CsAの標的分子をさらに詳しく確認するために、siRNAにより既知の標的をノックダウンしてウイルス増殖抑制が見られるかを確認したところ、いずれもウイルス増殖過程には関与していないことが明らかとなった。以上の結果から、他のCsA結合タンパク質の関与が考えられたため、CsA固定化ビーズを用いたプルダウン法によってCsA結合タンパク質を精製した。SDS-PAGE後に質量分析をおこなったところ、これまでに報告されていない新たなCsA結合タンパク質が検出された。再現性を確認するために同様の結果を繰り返したところ、バンドのパターンは類似しており、問題はないと考えられた。また、ウエスタンブロットについても繰り返し実施したところ、量的な変動が見られたタンパク質もあったが、十分な再現性を示すタンパク質も存在していた。ゲノム編集によるノックアウト細胞の構築については、ノックアウトが成功したと思われる細胞を追加で取得することができた。遺伝子ノックアウトがウイルスの増殖効率に与える影響について検討を行ったところ、ウイルス増殖過程に関与すると思われる宿主因子を見出すことができた。しかし、この宿主因子が真の標的であるかの結論はまだ出ていないため、検討する遺伝子の範囲を広げる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たなCsA結合タンパク質候補を同定するため、CsA固定化ビーズによるプルダウン法と質量分析実験を行い、それらが正しい結果であることをウエスタンブロット法によって確認した。これらの実験を繰り返したところ、同様の結果が得られたため、再現性に問題はないと考えられた。これまでの結果に基づいてノックアウト細胞の構築を進めているが、まだ全ての標的についてのノックアウト細胞は作出できていない。今後は、ウイルス増殖に関与する宿主因子を同定するために、ノックアウト細胞の種類を増やしていく予定である。また、ノックアウト細胞にその遺伝子を再導入して、ウイルス増殖効率が回復するかについても調べていく。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集技術によりA549細胞からノックアウト細胞を構築してきたが、まだ全ての標的タンパク質に対応するノックアウト細胞を揃えることができていないため、未完了の標的についてノックアウト細胞の構築を進める。得られた標的遺伝子ノックアウトA549細胞とコントロールA549細胞を用いて、インフルエンザウイルスの感染実験を行い、ウイルスの増殖を比較する。また、ノックアウト細胞にその遺伝子を再導入して、ウイルス増殖効率が回復するかについても評価する。さらに、同定した細胞タンパク質とウイルスタンパク質の相互作用について免疫沈降法等により検証する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、研究代表者の異動後の研究環境整備が予定よりも遅延し、さらにCOVID-19流行の影響も重なったことにより、本研究の進捗にやや遅れを生じた。まだ完了していないノックアウト細胞の構築、ノックアウト遺伝子の再導入細胞の構築、およびタンパク質の相互作用解析については、令和4年度に行う。実験計画をこのように変更したため、次年度使用が生じた。
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