2019 Fiscal Year Research-status Report
肺MAC症の増加要因と抗菌薬に対する治療抵抗性の解明
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19K08966
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
打矢 恵一 名城大学, 薬学部, 准教授 (70168714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Mycobacterium avium感染症 / 抗菌薬 / 薬剤抵抗性 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の本研究課題の研究成果について、当該年度の研究実施計画に基づいて、Mycobacterium aviumの抗菌薬に対する薬剤感受性の異なる臨床由来株のゲノム解析から得られた遺伝情報を網羅的に比較することにより、M. aviumの抗菌薬に対する抵抗性(低感受性)のメカニズムの解明を行った。その結果、以下の研究成果が得られた。 1.M. aviumの抗菌薬に対する薬剤感受性の異なる臨床由来株のゲノム解析を行った。使用菌株は、抗菌薬に対する低感受性株として肺M. avium症と診断された後、薬物治療を行う前に分離されたM. avium 46株、そして高感受性株として播種型M. avium症患者由来30株を使用して、次世代シーケンサーによるゲノム解析を行った。 2.M. aviumの抗菌薬に対する抵抗性の要因を解明するため、両グループの菌株のゲノムの塩基配列の比較、検討を行った。両ゲノムの塩基配列のSNPs(single nucleotide polymorphisms)を基に系統樹解析を行った結果、肺M. avium症患者由来株と播種型M. avium症患者由来株は異なるクラスターを形成し、両グループの菌株間には遺伝学的に大きな違いがあることが判った。そこで、両グループのゲノムの塩基配列の比較を行った結果、それぞれのゲノム上には特異的な遺伝子領域が見られ、とくに肺M. avium症患者由来株のゲノム上には、M. aviumの薬剤抵抗性に関与すると推定される遺伝子が存在していた。以上の結果から、本遺伝子が肺M. avium症由来株の薬剤抵抗性の要因に関与している可能性が強く示唆され、これらの結果は肺M. avium症の治療において非常に有用な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の本研究課題の目的は、治療に難渋する肺M. avium症の予防および治療の観点から、肺M. avium症由来株の抗菌薬に対する抵抗性(低感受性)の要因について、比較ゲノムを基盤とした網羅的な遺伝子解析により解明することである。当該年度の研究実施計画に基づいて行った研究の進捗状況から、下記の理由により現在までの達成度については概ね達成できたと考える。 M. avium感染症は、肺疾患である肺M. avium症(経気道感染)と全身性の播種型M. avium症(経腸感染)の主に2つの異なる病型がある。そこで、肺M. avium症と診断された後、薬物治療を行う前に分離されたM. avium 46株、そして播種型M. avium症患者由来30株を用いて薬剤感受性の比較を行った。その結果、rifampicinを除く、本感染症の治療に用いられているclarithromycinやethambutol、さらにstreptomycinやkanamycinなどの抗菌薬に対して、肺M. avium症患者由来株はより高い抵抗性を示すことが判った。 2019年度の研究実施計画に基づいて、このような薬剤感受性の異なる両グループの臨床由来株のゲノム解析を行うと共に、それらの遺伝情報の比較解析を行うことにより、肺M. avium症由来株の抗菌薬に対する抵抗性の要因について解析を行った。その結果、両グループのゲノム上には特異的な遺伝子領域が存在し、低感受性株である肺M. avium症患者由来株のゲノム上に薬剤抵抗性に関与すると推定される遺伝子を同定した。以上の結果から、本遺伝子が肺M. avium症由来株の薬剤抵抗性の要因に関与している可能性が強く示唆され、M. aviumの薬剤抵抗性の解明に大きく寄与することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、当該年度の研究実施計画に基づいて、分子疫学解析法(VNTR;variable numbers of tandem repeats)による薬剤感受性の予測の検討を行う。 我々は以前の研究において、VNTR型別解析はM. avium の病原性の予測において、その有用性を証明している。治療に難渋する肺M. avium症において、薬剤感受性の予測ができれば抗菌薬による治療をより迅速かつ正確に行うことができる。 そこで以下のように、その有用性の検討を行う。1.使用菌株は、2019年度に使用した臨床由来のM. avium 76株を用いる。各菌株から抽出したゲノムDNAを用いて、PCR法によりVNTR型別解析を行った後、系統樹を作成する。2.各クラスターに属するM. avium 株の各抗菌薬に対するMIC値について、クラスター間で統計学的な比較を行う。その結果、各クラスター間で薬剤感受性に違いが見られれば、VNTR型別解析により薬剤感受性の予測が可能になる。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究実施計画においては、抗菌薬に対して低感受性株である肺M. avium症由来M. avium 46株と高感受性株である播種型M. avium症患者由来40株を用いて、次世代シーケンサーによるゲノム解析を行い、得られた遺伝情報の比較、検討を行う予定であった。しかし、実際には播種型M. avium症患者由来40株中10株については解析を行うことが出来なかった。さらに、本研究課題の申請年度における研究実施計画に記載したゲノム解析用の費用は、本申請を行った後、その年度の別途予算を用いて解析を行うことが出来たため、翌年度に採択された本研究課題の予算を使用する必要が無くなったので次年度使用額が生じた。また、当該年度に実施する予定であった研究の一部が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け自宅待機となり中止となった為。 2020年度に使用する予算においては、当該年度の研究実施計画を遂行するための費用に加えて、2019年度において実施することが出来なかった播種型M. avium症患者由来10株のゲノム解析を行うための費用として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Moxifloxacin resistance and genotyping of Mycobacterium avium and Mycobacterium intracellulare isolates in Japan.2019
Author(s)
Yusuke Yamaba, Yutaka Ito, Katsuhiro Suzuki, Toshiaki Kikuchi, Kenji Ogawa, Naoki Hasegawa, Satoru Fujiuchi, Atsuyuki Kurashima, Takeshi Higuchi, Kei-ichi Uchiya, Akira Watanabe, Akio Niimi
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Journal Title
J Infect Chemother
Volume: 25
Pages: 995 1000
DOI
Peer Reviewed
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