2019 Fiscal Year Research-status Report
アスペルギルス感染におけるアレルゲン探索とアレルギー応答の解析
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19K08967
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
高塚 翔吾 国立感染症研究所, 真菌部, 主任研究官 (90609398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 真菌 / 感染 / Aspergillus / Signal Sequence Trap / アレルギー / アレルゲン / IgE / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Signal Sequence Trap(SST) 法によって選択されたアスペルギルスの抗原候補に関して標的遺伝子の遺伝子欠損株や遺伝子相補株を作製し、それらを用いて肺や所属リンパ節での免疫系細胞の応答とそれに伴う炎症に関して解析を行っている。目標としてアレルギー性の気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis : ABPA)の病態解明を念頭に、アスペルギルスのアレルゲンとして機能する分子を機能面から証明する。初年度の令和元年度はまずアスペルギルスの抗原候補であるY69遺伝子を標的遺伝子として、この遺伝子を欠損させたY69遺伝子欠損株と遺伝子欠損株にY69遺伝子を相補したY69遺伝子相補株を作製した。またマウスにアスペルギルスの野生型株とY69遺伝子欠損株を経鼻感染させ抗体産生応答を評価したところ、感染2日後のBALF 中のIgM, IgG, IgE は野生型株と比較してY69欠損株を感染させたマウスで著しく高い値を示した。この結果を受けて、感染肺のBALFを用いてin vitroにおけるB細胞の分化誘導を解析したところ、Y69欠損株のBALFを用いた群においてB細胞受容体のクラススイッチと抗体産生細胞への分化誘導が亢進していた。また、Y69遺伝子相補株も含めた同様の感染実験により感染2日後の肺への免疫系細胞の集積をみたところ、Y69欠損株を感染させたマウスで樹状細胞と単球・マクロファージの集積が野生型株、Y69遺伝子相補株と比較して著しく増加しておりいた。さらにこの感染実験で得られたBALFを用いてin vitroにおける肺の免疫系細胞の遊走試験を行ったところ、in vivoでの感染実験と同じく樹状細胞と単球・マクロファージの遊走能が増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アスペルギルスのin vitro系におけるSST法によって選択されたアスペルギルスの抗原候補を標的としていたため、当初は今回のようなY69遺伝子を欠損させたアスペルギルス株を用いた感染実験では宿主応答が減弱する可能性について考えていた。しかし、現時点では予想に反してこの遺伝子を欠損させると宿主応答がより強く惹起される流れとなっている。研究の方向性として特に問題はなく順調に進行しているがY69という分子の機能に関しては当初の想定とは逆に宿主の免疫系を抑制しているという方向で考えていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は令和元年度までに得られたアスペルギルスの単独感染の系の結果を元に実際のABPAのアレルギー状態を模したマウスの実験系においてY69の役割を解析する予定である。具体的には市販のアスペルギルスの可溶化抗原とアラムアジュバントの混合共沈物を事前に免疫しアスペルギルスに対するアレルギー応答を惹起しておいた状態で、野生型株とY69欠損株、Y69遺伝子相補株を感染させ、その後の宿主応答を比較する。この方法によってIgEの上昇や肺への免疫系細胞の集積に関して解析を進めるとともにT細胞やB細胞の応答や分化も含めて宿主内でのY69の機能を解析する。
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Causes of Carryover |
令和元年度に実施予定であった実験計画の一部に使用する試薬が輸入などの関係で3月末までに納品が難しくなったため。またコロナ禍の影響により研究業務を一時中断せざるを得ず、実験計画の一部にスケジュール変更が生じたため。
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