2021 Fiscal Year Research-status Report
アスペルギルス感染におけるアレルゲン探索とアレルギー応答の解析
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19K08967
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
高塚 翔吾 国立感染症研究所, 真菌部, 主任研究官 (90609398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Aspergillus / ABPA / 炎症 / 抗体 / アレルギー / アレルゲン / IgE / 感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、独自の Signal Sequence Trap (SST) 法によってスクリーニングされたアスペルギルスの分泌型タンパク質を標的抗原として、アスペルギルスの病原性因子として機能する分子を機能面から証明することを目指す。またアレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (allergic bronchopulmonary aspergillosis : ABPA) は大気中のアスペルギルスを吸引することで発症するアレルギー病態と関連した肺アスペルギルス症であり、見過ごされているものも含めてアスペルギルス症の中で大きな割合を占める疾患の一つである。今回標的としているタンパク性の抗原候補分子の病原性を調べるとともに ABPA の病態に寄与するアレルゲン様の機能を持つかどうかについても検証する。 令和3年度は前年度から解析を進めている抗原コード Y69 遺伝子(Y69)について引き続き解析を進めた。Y69 遺伝子欠損株の感染においては野生型と比較して炎症性サイトカインの産生が亢進せず、組換え Y69 は単球・マクロファージ系細胞に直接相互作用していた。これらの結果から Y69 は単球・マクロファージ系細胞細胞に作用して炎症応答を亢進させる病原性因子として働いている可能性が示唆された。また ABPA のアレルギーモデルマウスの系においても Y69 は好中球の活性化を担う因子の誘導を促進し、喘息の病態における関与も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今般の新型コロナに係る業務を優先するため、現時点で最終年度の期限を延長して課題に取り組んでいる。これまでY69遺伝子欠損株の感染においては野生型と比較して炎症性サイトカインの産生が亢進しておらず、組換えY69は単球・マクロファージ系細胞に直接相互作用している結果を得ている。そのためY69は宿主内において病原性因子として働き、炎症反応を促進している可能性が高いと考えられる。現時点でin vivoから導かれた宿主応答の結果とin vitroにおいて示された分子生物学的な結果に矛盾はなく結果自体は順当に得られている。またABPAのアレルギー状態を模したマウスの実験系を構築しY69欠損株を感染させたところ、野生型株と比較して、好中球の活性化に関わる因子の産生が大きく減弱していた。好中球の活性化は喘息の重症化におけるリスクファクターの一つとされており今後の延長期間ではABPAのアレルギーモデルマウスの系を使用しY69の病原性について解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで作製してきたアスペルギルスの Y69 欠損株、Y69 遺伝子相補株を用いて研究を進める。Y69 の病原性についてはまずY69欠損株を用いた単独感染モデルの結果をまとめるとともに、これまでに構築した ABPA のアレルギーモデルマウスの系を使用してアレルギー応答における Y69 の作用機序についても解析する。具体的には病理切片や Flow Cytometry 等を使用して宿主内におけるアレルギー病態やその応答を比較する実験を行う予定である。 また今後は他の標的抗原候補に関しても研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナウイルスの流行により国立感染症研究所の職員は COVID-19 関連業務を優先するよう要請があり、研究業務を一時中断したため実験計画の一部にスケジュール変更が生じた。またそれに伴い実験計画遂行に必要な試薬や消耗品の発注が次年度にずれ込んだため、延長した期間の中で適切に助成金を使用し研究を進めたい。
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