2019 Fiscal Year Research-status Report
The immune responses induced by BCG vaccination in the non-human primate TB model
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19K08968
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
辻村 祐佑 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 研究員 (30512404)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 結核 / BCG / カニクイザル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒトで認められる結核病変が観察でき、潜伏感染も再現できる唯一の動物であるカニクイザルを用いて、未だ明確ではないBCGの結核防御効果および結核病態を正確に把握することで、結核撲滅に向けた新たな戦略の基盤づくりを目指すものである。 当該年度はまず、BCGの肺結核および全身播種性の結核に対する有効性を評価した。乳幼児の予防接種に使用されている医療用のBCG(東京株)をヒトと等量、皮内接種し、14週後に50 CFUの結核菌(Erdman株)を経気道感染させた。感染後は2週間隔で12週間、血液サンプル回収や臨床診断を行い病態の観察をした。感染12週目に解剖を行い、剖検所見や病理解析、臓器内菌数の測定によりワクチン効果を評価した。その結果、対照群では全臓器(肺、肝臓、脾臓、腎臓、縦隔リンパ節)において結核感染を認めたが、BCG接種群では全身(肝臓、脾臓、腎臓)への結核菌の播種は有意に防御されていた。一方、肺および呼吸器リンパ節においてはBCG接種群でも感染は認められ、肺においては対照群と比較して有意差はなかった。 血液生化学検査としてヒトで用いられている赤血球沈降速度(ESR)やC反応性タンパク(CRP)等を測定した結果、BCG接種群では強く炎症が抑制されていた。この結果は、診断マーカーが臓器内生菌数を反映しきれていない可能性を強く示唆した。 本研究のサル結核モデルは、ヒトで報告されているBCGの肺結核および播種性結核に対する効果を再現するモデルであることが分かったので、次年度はBCG投与サルにおける結核感染前後の免疫応答と防御効果の相関について、末梢血単核球細胞や血漿などを用いて探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、未だ明確ではないBCGの結核防御効果について、ヒト肺結核と同様の病変を示し、潜伏感染/再活性化の検討が行える唯一の動物モデルであるカニクイザルを用いて詳細に解析し、結核病態を正確に把握することで結核研究の基盤を作ることである。 研究の実施計画として以下の3つの項目を中心に実験を遂行することとした。①BCGは肺結核・全身性の結核に有効なのか評価する。②BCGの防御効果が確認されたサル(潜伏感染/殺菌・根絶)と認められなかったサル(活動性結核)の結核抗原特異的免疫反応および肺局所への浸潤細胞を比較する。③BCGワクチンと肺局所への肉芽腫形成の関連性を病理学的に解析する。 当該年度は予定通り①を遂行し、予定通りのサル結核実験を遂行できた。結果としては結核菌(Erdman株)を50 CFU経気道感染させることで、全頭の結核感染が確認された(IGRA検査陽性)。対照群では認められた臨床診断の悪化(体重減少、ESRやCRPの炎症マーカーの上昇、AG比の低下)が、BCG群では強く抑制された。また臓器内菌数の測定においても対照群では肺および他臓器にて結核感染が認められたが、BCG群では粟粒性結核の強い防御効果が確認された。興味深いことにBCGを接種しても肺結核に対する防御効果は弱いという結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の実験結果から、霊長類医科学研究センターで構築したカニクイザル結核モデルは、ヒトで報告されている結核病態およびBCGの予防効果を再現できるモデルであることが分かった。計画を遂行する上で実験条件の変更も必要ないと考えられる。今回得られた実験結果からの課題としては、血液生化学検査の結果は肺の臓器内菌数を反映していなかったこと、すなわち新たな診断マーカーが必要であるということである。 今後は、結核防御効果を示す個体(潜伏感染/殺菌・根絶)と活動性結核になる個体の免疫応答の違いを末梢血単核球細胞や肺胞洗浄液細胞、血漿サンプルを用いて解析していく。また、病理解析を行い、剖検所見や臓器内菌数、臨床診断との相関性をみると同時に、BCG接種サルは結核感染にて殺菌能の高い肉芽腫を形成するのかも求めていく。
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Causes of Carryover |
当該年度においては、実験条件の検討・確認として以前より飼育していたサルを用いてのBCG接種および結核感染といった動物実験が主であり、病理解析・免疫学的解析は一切行えていない。またデータが揃っていないため、学会発表や論文等への成果発表もなかった。そのために次年度使用額が生じた。 次年度には使用するサルの頭数も増え、解剖時サンプルの病理学的解析、フローサイトメトリー・ELISPOTといった免疫学的解析、PCR・シークエンサーの分子生物学的解析も開始する予定である。
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