2020 Fiscal Year Research-status Report
統合的脳機能を支える甲状腺ホルモンの精神基盤構築への接点
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19K08969
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 克哉 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井樋 慶一 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60232427)
片山 統裕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20282030)
佐藤 達也 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00568222)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン / 甲状腺機能低下症 / レット症候群 / 自閉症スペクトラム症 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで行ってきた実験データの再現性の確認ならびに統括を行なった。妊娠母マウス(胎生17日目)に抗甲状腺剤を与え、仔マウスが出後2週齢になるまでこれを継続し、実験的に甲状腺機能低下症マウスを作成した。加えて、出生後よりthyroxineを外因性に投与したレスキュー群も用意した。これらの実験群のパルブアルブミンmRNA発現を観察したところ、既報のように確かに甲状腺ホルモンがパルブアルブミン発現を制御していることが確認された。生後2週目で抗甲状腺剤の適用を終了した後、血中甲状腺ホルモン量の推移を観察した。生後2週目まで抗甲状腺剤の適用を施された群のホルモン量は、その後、徐々に回復し処置終了後約2週間(生後30日)で対照群との統計学的な有意差は失われた。このようなホルモン量の回復とともにパルブアルブミン発現も回復した。一方、甲状腺機能低下症群では、レット症候群の責任分子であるMeCP2発現が大脳皮質において低下していた。成体脳では対照群との差は失われその挙動はパルブアルブミンに酷似していた。さらに神経突起の成熟などに重要な役割を演じるCUX1発現も生後2週目の大脳皮質で低下していたが、パルブアルブミンやMeCP2とは異なり、個体成熟後も継続して、その発現低下が認められた。周産期の甲状腺ホルモン欠乏は大脳皮質における層形成を阻害することが知られているが、これはCUX1発現低下に起因する可能性が示唆される。本実験結果においても、体性感覚野の層形成が一様に阻害されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で研究の遂行に支障が出たため。
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Strategy for Future Research Activity |
甲状腺ホルモン欠乏によってパルブアルブミン発現が一時的に減少するが、形態計測額的手法を用いて、全脳におけるその発現の差異を定量し、領域特異性の有無を検討する。また、甲状腺ホルモンがMeCP2やCUX1発現に対して、直接的に影響を及ぼすのか、または間接的な作用を示すか、に関しても検討予定である。
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Causes of Carryover |
年度終盤は論文作成に移行したため、わずかな残額が生じたが、次年度使用額は試薬購入費に充当予定である。
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Research Products
(4 results)