2020 Fiscal Year Research-status Report
The role of GPR84 in NASH
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19K08983
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮澤 崇 九州大学, 大学病院, 講師 (30443500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NASH / 慢性炎症 / マクロファージ / 線維化 / Gタンパク質共役型受容体GPR84 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病・肥満などの生活習慣病の増加を背景として非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やNASH肝癌の罹患率が急増しており、NASH及びNASH肝癌の発症・進展機構の解明と予防・治療法の開発は喫緊の課題である。本研究では、脂肪肝からNASHを経てほぼ全例が肝癌を発症するヒトの病態に酷似したNASHマウスを用いて、過剰な脂肪蓄積により細胞死に陥った肝細胞を取り囲んで貪食・処理する特徴的な組織像(hepatic crown-like structure(hCLS))を形成するマクロファージに主に発現する、中鎖脂肪酸をリガンドとするGタンパク質共役型受容体GPR84に着目し、NASHの発症・進展機構の解明と医学応用を目指して研究を行っている。これまでに、GPR84ノックアウトマウスとNASHモデルマウスの交配によりGPR84が欠損したNASHマウス(DKOマウス)を作製し、高脂肪食負荷を20週間負荷したのちサンプリングを行って、肝臓における表現型を検討した。DKOマウスはNASHマウスと比較して体重や摂食量、血糖値などに有意な差を認めなかったが、ALT値の有意な増加と肝線維化の増悪を認めた。また、GFPマウスとGPR84ノックアウトマウスの骨髄細胞を放射線照射したNASHマウスに移植する実験を行い、1か月の回復期ののち高脂肪食を20週間負荷して、表現型の解析を行った。GFPマウスを移植したコントロールマウスと比較してGPR84ノックアウトマウスの骨髄を移植した骨髄細胞特異的GPR84欠損NASHマウスの体重や摂食量、血糖値などに有意な差は見られなかった。また骨髄細胞特異的GPR84欠損マウスではDKOマウスと異なりALTの上昇や肝線維化の増悪は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの導入や交配によるDKOマウスの作製、解析についてはほぼ計画通りに遂行できており、また骨髄移植実験も当初の計画通り進捗している。骨髄移植実験ではコントロールと比較してALTの上昇や肝線維化の増悪が見られなかったが、骨髄移植を施行したマウスは骨髄移植を施行していないマウスと比較して体重の増加がやや抑制されていた。おそらく骨髄照射そのものの影響で体重の増加が抑えられた可能性がある。体重増加が抑制されている影響を排除するために、NASHマウスを用いて体重増加への影響を軽度にとどめる放射線照射量の基礎検討の実験が必要であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、NASHモデルマウス及びDKOマウスに高脂肪食を負荷する実験の解析結果から、DKOマウスでは肝細胞死が増加しており、肝臓での炎症細胞の浸潤が増えることにより肝線維化が増加している可能性が示唆された。一方、骨髄移植をして作成した骨髄細胞特異的GPR84欠損NASHマウスではそのような表現型が認めれなかった。この原因として、DKOマウスで認められた表現型の差は骨髄細胞以外で発現するGPR84を介した作用である可能性や骨髄照射を行うことにより高脂肪食を負荷しても体重の増加が不十分であるため肝臓の表現型が十分に検討できていない可能性などを考えている。上記問題を解決するために肝臓に存在する様々な細胞でのGPR84の発現を検討するとともに、体重増加への影響を軽度にとどめる放射線照射量の基礎検討を行う予定である。また、マクロファージ機能に対するGPR84シグナルの関与を明らかにする目的でGPR84ノックアウトマウスから採取したbone marrow derived macrophage(BMDM)を用いてin vitroでマクロファージ機能を評価する実験を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染の影響により動物実験施設の使用制限が生じ、動物実験のための繁殖および飼育に必要な飼料が予定より少なくなったため。今年度の残金は予定通り試行できていなかった動物実験に必要な費用として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)