2020 Fiscal Year Research-status Report
膵α細胞、β細胞のidentityの維持におけるFCoRとFoxo1の協調的関与
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19K08988
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小谷 紀子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (50625332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中江 淳 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (00344573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵α細胞 / 膵β細胞 / 糖代謝 / 分化 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵α細胞、β細胞のidentityの維持に関わるFCoRとFoxo1の働きについてこれまで解析を行ってきた。α細胞を規定するArxの発現をFCoRは抑制し、Foxo1は促進することが分かった。Arxの発現はプロモータ領域のCGrich領域のメチル化による調整されており、DNAメチル化酵素のDnmt3aが関与することが知られている。これまでの解析より、FCoRはDnmt3aの発現を促進することを認めた。一方でFOXO1はArxのプロモータ領域に結合することで、DNMT3aのこの領域への結合を阻害することを認めた。これより、DNMT3aによるArxプロモータ領域のメチル化は、FOXO1の結合により抑制され、Arxの発現が促進されることが示唆された。そこで次に、FOXO1およびDNMT3aの関連について解明するために、β細胞特異的Dnmt3aKOマウス(Dnmt3aKO)、およびβ細胞特異的Foxo1・Dnmt3aダブルKOマウス(DKO)を作製した。体重変化を調べたところ、Dnmt3aKOにおいてコントロールマウスと比して有意な体重増加を認め、Foxo1をさらにKOしたDKOでは、体重増加を認めず、コントロールマウスと同様の体重推移に正常化した。 視床下部室傍核にあるSim1ニューロンにおいてDnmt3aKOすると体重増えるという報告がある。またFoxo1を視床下部のAgrp,Npyにおいて摂食亢進に働き、KOすると摂食が減少し体重が減少することが報告されている。これらの報告は、今回膵β細胞におけるDnmt3KO、DKOの結果と似ており興味深く、両者の関連する機序について解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主研究員の小谷は国立国際医療研究センター病院に異動し、研究継続目的に慶應義塾大学には非常勤講師として勤務を続けている。中江は2019年より国際福祉医療大学に異動し、現在、研究室の準備を行っている。非常勤講師の立場で時間の制約があること、研究室の体制を整えるための時間を要したこと、等の状況下で、研究の進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、FcorKOマウスにおいて、α細胞量の増加、インスリン抵抗性の亢進、インスリン分泌低下の表現型を認めた。そこで、これまで、α細胞量の増加の機序解明を行い、FCoRとFoxo1が協調して、Arxプロモータ領域のメチル化を介してその発現を調節することを、またこのメチル化にDnmt3aが関与することを報告している。今後の主な研究の軸は次の3点である; 1.膵β細胞におけるFOXO1およびDNMT3aのArx発現調節における機序の解析 2.FOXO1およびDNMT3aの体重変化およびエネルギー代謝における機序の解析 3.FcorKOにおけるインスリン分泌低下の機序解明
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Causes of Carryover |
次年度使用額が332,253円生じているが、実験の進捗に合わせた使用の結果であり、また、年度末の納品が遅れ4月以降の納品となったことが主な理由である。抗体等の試薬は使用する際に随時購入が必要であり、次年度使用額については、次年度の助成金と合わせて、研究遂行目的に使用する予定である。
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