2020 Fiscal Year Research-status Report
伸展刺激で得られる骨格筋細胞外小胞は新たな糖代謝改善薬になり得るか
Project/Area Number |
19K08993
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
齋藤 従道 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80572619)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨格筋細胞 / 伸展刺激 / 細胞外小胞 / 糖取り込み / グルコーストランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに培養骨格筋細胞(C2C12 myotubes)に伸展刺激を加え、分泌される細胞外小胞(EVs: Extracellular Vesicles)が骨格筋や脂肪細胞において糖取り込み促進作用があることを見いだし、報告している。基底状態においてもC2C12 myotubes からEVs(Basal EVs)は分泌されるが、糖取り込み促進作用は認めず、伸展刺激により分泌されるEVs(Stretch EVs)では再現性を持って糖取り込み促進作用があることを確認できた。そこで、Basal EVsとStretch EVsの比較検討を行ったところ、Stretch EVsには糖代謝に関与する分子(グルコーストランスポーター4(Glut4)、リン酸化AMP-activated protein kinase(AMPK))のタンパク、small RNAが含有されることを見いだした。次に糖取り込み促進作用のあるStretch EVsを多量に精製し、糖尿病モデルマウスに投与することによる変化を観察することにした。そのためには複数のステップでの条件設定を行ってきた。そしてある特定の条件により、マウス骨格筋に骨格筋培養細胞から精製したEVsを取り込ませられる設定ができた。しかし、脂肪組織ではEVsの取り込み量をあげられず、現在脂肪組織での発現量を上げる条件設定を行っている。脂肪組織、骨格筋でのEVsを取り込める条件設定が終われば、In vitroにて精製したEVsがin vivoにて糖代謝を改善することができるかを今後確認予定である。糖代謝に影響することが明らかとなった場合、インスリン刺激とは独立した糖取り込み機構の解明、新たな糖尿病につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
In vivo 研究計画書にあるとおりin vitroにて精製した細胞外小胞(EVs)を用いたin vivoでの実験に取り組んでいる。まずは、精製したEVsをマウスに投与実験を開始し、EVsの取り込み条件の設定に取りかかった。マウスの腓腹筋に選択的にEVsを取り込ませることに成功し、糖取り込みに関与する分子、siRNAの取り込みが上がっていることを確認した。現在取り込みを最大限にあげる条件の設定を行っている。一方、脂肪組織においてEVsを取り込ませる条件設定を行っているが、筋肉組織ほどの成果を得られていない。引き続き条件設定を行っているが、予定以上の時間を要している。そのため、脂肪組織での条件設定は継続しながら、筋肉組織に特化した発現調節を行い、糖代謝への影響を確認することに変更してみる。 In vitro 伸展刺激により分泌される細胞外小胞(Stretch EVs)内にグルコーストランスポーター(Glut4)の発現に関するsiRNAが複数同定されたため、Stretch EVsを培養脂肪細胞に添加したところ、EVsが脂肪細胞に取り込まれていること、脂肪細胞でのGlut4の発現が増加していることを確認できた。また、Stretch EVs内で糖取り込みに関与する可能性のあるリン酸化AMPKを同定し、添加した脂肪細胞でのリン酸化AMPK量が増加しいることも確認した。 これら分子の発現を調節したEVsを作製する予定であったが、そこまでは至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivo 培養骨格筋細胞から多量にEVsを精製し、糖尿病モデルマウスに投与し、糖代謝に影響するかを確認する予定である。具体的な確認方法としては、まずは骨格筋に特異的にEVsを取り込ませたマウスに糖負荷試験、インスリン負荷試験、骨格筋や脂肪組織でのGlut4やAMPKの遺伝子、タンパク発現を確認することを予定している。 In vitro 伸展刺激により分泌される細胞外小胞(Stretch EVs)内にグルコーストランスポーター(Glut4)の発現に関与するsiRNAがターゲット細胞での発現調節する可能性があることが確認できた。糖取り込み関与するsiRNAは複数あることが判明しているが、どのsiRNAが関与しているかは不明である。そこで、候補のsiRNAを基底状態において分泌される細胞外小胞(Basal EVs)に導入し、脂肪細胞でのGlut4の発現に変化が出るかを検討し、どのsiRNAが関与するかを同定する。 また、Stretch EVs内で糖取り込みに関与する可能性のあるリン酸化AMPKを同定し、脂肪細胞での発現が上がっていることを確認した。しかし、増加したリン酸化AMPKが糖取り込みに関与したかは不明であるため、リン酸化AMPKの活性化を阻害する化合物にて処理した後に糖取り込みが変化するかを確認する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い実験できない期間があった。また、細胞外小胞(EVs)に遺伝子もしくはタンパクを導入するにあたり、試薬、外部委託による費用が必要になるが、研究計画が若干遅れたためそれら消耗品の使用に至らなかった。次年度にて使用予定である。
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