2019 Fiscal Year Research-status Report
ベージュ脂肪細胞の機能維持に必要な因子の探索と機能解析
Project/Area Number |
19K09005
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大野 晴也 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (60725894)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ベージュ脂肪細胞 / PPARα |
Outline of Annual Research Achievements |
ベージュ脂肪細胞は余剰なエネルギーを熱として散逸することで全身の代謝改善に寄与するが、分化刺激が失われるとその機能を失い、白色脂肪細胞の特徴を持つようになる。マウスにβ3アドレナリン受容体作動薬であるCL316, 243を1週間皮下注射することで、鼠径部白色脂肪組織にベージュ脂肪細胞を誘導できるが、アドレナリン受容体刺激の除去後のベージュ脂肪細胞の遺伝子発現を解析するとucp1に代表される熱産生遺伝子群の低下を認め、またRNAシークエンスで解析したpathway解析ではPPARsignalling pathwayが上位となっていた。In vitroでのRosiglitazoneによるベージュ脂肪細胞の機能維持解析の結果と合わせ、PPARαの機能につきより詳しく解析を行っていく方針とした。ベージュ脂肪細胞に分化させた後にPPARαアゴニストを添加することで熱産生遺伝子や酸素消費量で評価した熱産生機能を維持することができた。さらに、PPARαアンタゴニストを用いた検討により、ベージュ脂肪細胞の熱産生機能維持にはPPARα活性が必要であることを見出した。ただし、培養白色脂肪細胞にPPARαを過剰発現しただけではベージュ脂肪細胞への分化誘導は起こらず、PPARαのベージュ脂肪細胞の機能維持はPPARα単独のベージュ脂肪細胞への分化誘導の作用ではなく、熱産生機能維持に特化した機構や、PPARαアゴニストによる他の転写因子への作用が影響している可能性を考えた。実際に、PPARαアゴニストの投与により、ベージュ脂肪細胞への分化を強力に誘導する転写共役因子であるPRDM16タンパクの安定化が認められ、PPARαアゴニストによるベージュ脂肪細胞機能維持機構の一端であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベージュ脂肪細胞の機能維持に関してPPARαが果たす役割に注目し、マウスモデルおよび培養細胞を用いた検討により、PPARαアゴニストを使用することでベージュ脂肪細胞の機能維持を可能とすることができる可能性を見出した。また現在、選択的PPARαを用いた検討により、PPARαアゴニストが調節する遺伝子プロモーター領域における他の転写共役因子との相互作用も明らかにしようとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
PPARαと協調して熱産生関連遺伝子の発現を制御していると考えられる新規転写因子について数点候補を見出しており、同因子の熱産生関連遺伝子におけるrecruitmentにつき、ChIP-qPCR、ChIPシークエンスにより検討する。 また、マウスモデルにおいてβ3アゴニストの継続的投与により白色脂肪組織中にベージュ脂肪細胞を誘導した後に、選択的PPARαアゴニストを投与することで、ベージュ脂肪細胞の特性を維持することが可能となるかを検討する。 さらに、研究者らのグループはヒトにおけるベージュ脂肪細胞活性化モデルとも考えられるヒト褐色細胞腫の脂肪組織も有しており、PPARαや新規転写因子のヒト組織における位置づけについても検討する。
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Research Products
(5 results)