2020 Fiscal Year Research-status Report
POMCを軸とする内分泌ネガティブフィードバック機構の分子機序の解明
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19K09007
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
岩崎 泰正 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (30303613)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロオピオメラノコルチン / ストレス / ネガティブフィードバック / グルココルチコイド / 下垂体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の研究課題の最終目標は、視床下部・下垂体・副腎系(HPA軸)のネガティブフィードバック調節を制御する分子機序を明らかにすることである。副腎皮質束状層から分泌されたグルココルチコイドは、最上位内分泌器官である視床下部(特に室傍核 CRH)のみならず下垂体前葉の ACTH 産生細胞に作用してネガティブフィードバック作用を発揮する。このため、グルココルチコイドが ACTH ペプチドをコードする proopiomelanocortin (POMC) 遺伝子の発現に抑制的に作用する機序を明らかにする目的で、弘前大学蔭山准教授との連携により、グルココルチコイド受容体の核内移行に関与する遺伝子・蛋白である FKBP4 ならびに FKBP5 の発現にグルココルチコイドが及ぼす影響を解析した。 その結果、下垂体 ACTH 産生 AtT20 細胞において、グルココルチコイドは Fkbp4 の発現を抑制し、一方で Fkbp5 の発現を顕著に増加させた。また Fkbp5 の発現を siRNAで抑制すると、グルココルチコイドの非存在ないし存在下に関わらず POMC の発現は有意に増加した。この結果から、Fkbp5 は下垂体 ACTH 産生細胞において POMC 発現に対して抑制的な作用を示すことにより、グルココルチコイドの POMC 発現に対するネガティブフィードバック抑制機構に関与しているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は年度当初に高知大学を定年退官し鈴鹿医療科学大学に移籍したため、新たな実験環境の構築に時間を要し、またコロナ禍のため研究を補助・遂行する人員が不足したことも相まって、所属施設における実験の遂行が極めて困難な状況であった。しかし従来から連携している研究者とのコラボレーションにより、前述の成果を挙げることができた。また自身が初年度に立案した研究計画は令和3年度に持ち越すことになり、結果的に初年度の研究費は温存した。本年度に得られた成果の中で特に注目すべき点は、当初の研究計画で研究の標的とした複数の遺伝子(Rasd1, HDAC6, FKBP4/5, GDF15など)のうち、Fkbp5がグルココルチコイドにより下垂体細胞で発現誘導されることを確認したことである。Fkbp5(ヒトではFKBP5)はグルココルチコイド受容体の細胞質・核内移動に影響を与えることが知られており、グルココルチコイドによるネガティブフィードバック調節に、下垂体のレベルにおいて関与している可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のごとく、令和2年度に予定していた研究計画を本年度以降に行う。研究の対象とする遺伝子群(Rasd1, HDAC6, FKBP4/5など)を対象とした転写調節領域のクローニング作業は令和元年度までに順調に作業が推移し、ヒトおよびラットにおいて、ほぼ全てのクローニングを完了した。またin vitroにおいて転写調節を解析するための細胞(ヒト神経系由来BE2C細胞株など)培養系の確立、および各種グルココルチコイド受容体の発現ベクターの作成作業など、研究資材の準備も完了している。また遅れていた研究環境の整備も、鈴鹿医療科学大学の東洋医学研究所において構築がほぼ終了しつつある。今年度は、新たなグルココルチコイド標的遺伝子としてHDAC6対象とした実験に駒を進める予定である。
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Causes of Carryover |
前述のごとく、昨年度は大学の移籍、およびそれに伴う研究環境の構築に加え、コロナ過で人員や研究資材の調達に難渋したこともあり、実験を円滑に遂行することが極めて困難な状況であった。しかしそのような状況の中でも、他大学との情報交換を頻繁に行い、令和3年度に新たな研究機関(鈴鹿医療科学大学東洋医学研究所)で研究を継続・遂行するための準備も整ってきた。結果的に令和2年度の研究費を温存することが出来たため、令和3年度より、新しい職場における実験環境の整備を完了し、それが終了し次第、過去の研究計画の分も含め、当初予定していた実験を遂行していく予定である。
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Research Products
(2 results)