2019 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫シグナルTRIF経路を介した視床下部炎症による摂食調節異常機構の解析
Project/Area Number |
19K09019
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Research Institution | Toyama Prefectural Institute for Pharmaceutical Research |
Principal Investigator |
渡邉 康春 富山県薬事総合研究開発センター, その他部局等, 研究員 (80646307)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 視床下部炎症 / 肥満 / 自然免疫センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食によって誘導される視床下部の炎症反応が、摂食抑制ホルモンであるレプチンのシグナルを障害し、過食になることが肥満の原因の1つであることがわかってきた。我々は、Toll様受容体4(TLR4)とTLR3のシグナル伝達に関わるアダプター分子TIR-domain-containing adapter-inducing interferon-β (TRIF)が、視床下部炎症に関与し、摂食調節異常を誘導して、過食性肥満の発症に深く関与することを見出した。本研究では、TRIFシグナルを活性化するTLRを同定するため、TLR3欠損マウスとTLR4欠損マウス、TLR3/TLR4二重欠損マウスに高脂肪食を摂餌させ表現型の解析をおこなった。 TRIF欠損マウスでは、高脂肪食摂餌による視床下部の炎症反応が軽減することによって、レプチンシグナルの障害が改善し、摂餌量が減少することにより、高脂肪食誘発性の肥満が改善していた。一方、TLR4欠損マウスの高脂肪食摂餌量は、野生型マウスと同程度であり、体重も軽減しなかった。TLR3欠損マウスは、高脂肪食摂餌による体重増加が軽減したが、摂餌量や酸素消費量は野生型マウスと同程度であった。TLR3/TLR4二重欠損マウスは、高脂肪食餌量や体重は軽減しなかった。以上より、TLR3欠損マウスやTLR4欠損マウス、TLR3/TLR4二重欠損マウスの表現型は、TRIF欠損マウスの表現型とは明らかに異なっていることから、TRIFシグナルを誘導し視床下部炎症の発症に関与する上流の分子として、TLR4及びTLR3は関与しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TLR3欠損マウスとTLR4欠損マウス、TLR3/TLR4の二重欠損マウスを用いることにより、TRIFシグナルを誘導し視床下部炎症の発症に関与する上流の分子として、TLR4及びTLR3は関与しないことが示唆された。本結果は予想外であり、TLR4やTLR3とは異なる自然免疫センサーがTRIFシグナルの誘導に関与すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①TRIF経路を活性化し視床下部炎症を誘導する自然免疫受容体の探索 TRIFシグナルを活性化する自然免疫センサーとして、TLR3やTLR4以外に、Stimulator of interferon (IFN) genes (STING)が報告されている(Wang et al, Cell Host Microbe, 2016)。そこで、STINGの視床下部発現を確認後、合成リガンドDMXAAを脳室内投与し、レプチンシグナルが障害されるのか検討する。 ②視床下部におけるTRIF発現細胞の同定 2019年度にも計画していたが、十分に実施できず、2020年度も継続して実施する。我々は、TRIF遺伝子が視床下部にも発現していることをリアルタイムPCR法により確認しているが、その発現細胞は不明である。そこで、ミクログリアやアストロサイトを含めて視床下部のTRIF発現細胞を同定し、TRIF発現細胞とレプチンシグナルを伝達する神経細胞との空間的関係を、定常状態と高脂肪食摂餌時において明らかにする。TRIF発現細胞をin situハイブリダイゼーション法で検出し、さらにミクログリアの特異的マーカーやアストロサイト特異的マーカー、ニューロンのマーカーで多重染色して共焦点レーザー顕微鏡で観察することで、TRIF発現細胞を同定する。
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Causes of Carryover |
2019年度に計画していた、視床下部におけるTRIF発現細胞の同定のための実験が遅延し、次年度使用額が発生した。2020年度に継続して実施する予定である。
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Research Products
(4 results)