2019 Fiscal Year Research-status Report
持続肺換気保存法を用いたドナー肺機能改善と長時間肺保存法の開発
Project/Area Number |
19K09040
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
松田 安史 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (00455833)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐渡 哲 東北大学, 大学病院, 講師 (20396485)
大石 久 東北大学, 大学病院, 助教 (60451580)
野田 雅史 東北大学, 大学病院, 講師 (70400356)
平間 崇 東北大学, 大学病院, 特任助手 (80510338)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90323104)
兼平 雅彦 東北大学, 大学病院, 助教 (90374941)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 肺保存 / 肺移植 / 組織代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は深刻なドナー肺不足であり、待機患者の約40%は肺移植前の待機期間中に死亡している。実際のドナー肺利用率は約60%であり、約40%のドナー肺は、肺炎や虚血時間が長時間にわたるという医学的理由により移植に利用されていない。現在の肺保存方法は、ドナー肺摘出時に肺動脈から灌流液を流して肺内の血管を灌流液で満たして血液を除いた状態とし、肺を15~20cm H2Oの圧で拡張した状態で気管を閉鎖切断し、肺を膨張した状態で4℃の低温にして臓器を搬送している。この保存方法では、8時間が虚血許容時間をされており8時間を超える虚血時間(ドナー肺摘出手術にて血流遮断されてから、レシピエント手術で吻合を終了して血流を再開するまでの時間)では、移植後虚血再灌流障害による肺障害が生じることにより移植肺機能不全を発症してしまう。肺移植後急性期における死因で最も多いのがこの移植肺機能不全である。移植の予後を改善するためには移植肺機能不全を引き起こさないような長時間にわたる保存が可能な保存方法が求められている。長時間の肺保存では、肺は代謝を行なっていてその代謝を維持するためのglucose(ブドウ糖)と酸素が必要である。Glucoseは灌流液に含まれる高濃度のglucoseが肺血管の中にある灌流液から供給されるが、酸素については膨張した肺の気道に存在する酸素だけでは、長時間の保存中に供給される酸素量としては不足であり、保存中に酸素を供給する必要がある。これを可能にした肺保存方法が、低温持続肺換気保存法(continuous ventilated lung preservation: CVLP)である。本実験はこの低温持続肺換気保存法(C V L P)を用いて実験を行なった。初年度では、まずCVLPにおける肺保存、無換気による保存(従来方法による保存)、脱気した状態での肺保存での実験検討を行なっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肺を脱気した状態での肺保存(A群)、CVLPにより肺保存した群(B群)、無換気による肺保存(C群)の比較を行ったところ、気道内の酸素濃度(%)が、CVLPによる肺保存(B群)では気道内に酸素供給が行われているため酸素濃度の低下が認められなかったが、A群とC群では保存前に比較して有意に保存後の気道内の酸素の濃度の低下が認められた。また、気道内の二酸化炭素濃度(分圧mmHg)では、CVLPによる肺保存(B群)では、気道内の二酸化炭素分圧は上昇しなかった。これは換気により肺組織から産生された二酸化炭素が定期的に排泄された結果と考えられた。A群とC群では保存前に比較して有意に保存後の気道内の二酸化炭素分圧が上昇し、肺組織から産生された二酸化炭素が気道内に蓄積していると考えられた。保存前と保存後の肺浮腫の程度(wet/dry ratio)、肺組織中のサイトカイン(quantitative RT-PCTでの検討によるTNF alfa, IL-6, IL-8, TGF betaのmRNAの発現)、肺組織中エネルギーの評価(肺組織中のATP(adenosine tri-phosphate)の濃度)については現在解析を行なっているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はブタ摘出肺を用いた CVLPによる肺保存実験を行なって、従来の肺保存法である膨張した状態での低温肺換気保存法を比較していく予定である。研究者の移動による影響やCOVID-19蔓延による実験室閉鎖の影響があり、やや実験が遅れている印象はあるが、今後もブタを用いた肺移植の実験を繰り返していく予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は研究者の移動による影響やCOVIDー19の蔓延による実験室の閉鎖の影響があり、ある一定の時期に実験が行えなかったことがある。そのため本年度使用額に繰越が生じた。次年度にはブタを用いた肺保存実験を行い、そこから得られたサンプルについての生化学実験を行う予定としている。ブタの購入費及び生化学実験に用いられる試薬の購入等について使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)