2020 Fiscal Year Research-status Report
持続肺換気保存法を用いたドナー肺機能改善と長時間肺保存法の開発
Project/Area Number |
19K09040
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
松田 安史 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (00455833)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐渡 哲 東北大学, 大学病院, 講師 (20396485)
大石 久 東北大学, 大学病院, 助教 (60451580)
野田 雅史 東北大学, 大学病院, 講師 (70400356)
平間 崇 東北大学, 大学病院, 特任助手 (80510338)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90323104)
兼平 雅彦 東北大学, 大学病院, 助教 (90374941)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 肺移植 / 肺保存 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本はドナー不足により、日本臓器移植ネットワークに登録した待機患者の約37%が移植を受けられず待機中に死亡している。ドナーの急激な増加は現状では見込めないため、少ないドナー肺を有効活用する技術が求められている。また、現在の保存方法では8時間の虚血時間が求められている。これは、8時間を超える虚血時間の場合には虚血再灌流障害の発生により移植肺機能不全となり、レシピエントの死亡に至る可能性がある。現在の肺保存方法では、ドナーの体内で灌流を行なった後、肺を膨張した状態で冷却して保存する。そこで我々はドナーの体内で灌流を行なった後に肺を換気して冷保存し、ドナー肺の有効活用と長時間肺保存の研究を行なっている。ドナー肺を灌流後、冷却した状態で換気を行い肺を保存する方法を、低温持続肺換気保存法(CVLP: continuous ventilated lung preservation)と呼んでいる。これまでは、保存中のドナー肺の気道内の酸素濃度、二酸化炭素濃度を測定した。従来の肺を膨張した状態を維持して保存する方法では、気道内の酸素濃度は低下し二酸化炭素濃度が上昇するのに対し、CVLPによる肺保存では、酸素濃度は一定に保たれ、二酸化炭素濃度も上昇することなく、気道から酸素を得ている細胞が低酸素にならず細胞の代謝を維持できる可能性が示唆された。肺を脱気した状態での肺保存(A群)、肺を膨張した状態で無換気で保存する(従来法)肺保存(B群)、CVLPにより肺保存した群(C群)として、肺組織中の乳酸濃度を測定した。低酸素状態では細胞が嫌気性代謝を行い、その結果として組織中の乳酸濃度が上昇する。A群では保存前に比較して保存後では乳酸濃度が上昇した。しかしB群では保存前と保存後では乳酸値の上昇は認められなかった。CVLPを用いて保存したC群では、保存後に乳酸濃度が上昇した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳酸値の上昇は、嫌気性代謝のみでなく持続換気保存では、好気性の条件においても組織中の乳酸濃度が上昇したことになる。組織の乳酸濃度は、乳酸の産生と消費のバランスにより規定されると考えられる。筋肉では酸素不足による嫌気性条件下で、嫌気性代謝が亢進し乳酸の産生が亢進する一方、乳酸がエネルギー源として消費/分解されることが近年報告されている。肺の組織の嫌気性代謝に関する報告は少ないが、類似した代謝が行われているとすると仮定すると、A群では乳酸の産生が最も亢進しているため、一方でC群では乳酸の消費が最も少ないために乳酸値が高値となり、Inflation群では乳酸の産生と消費のバランスにより3群で最も乳酸値が低くなった可能性がある。しかし、これらは推測の域を出ておらず、この結果を検討していく。今後もブタ摘出肺を用いたCVLPによる肺保存の実験を行い、従来の肺保存法と比較してCVLPの有効性を確認していく予定である。今後は肺組織の浮腫の程度を示す( wet/dry ratio)や肺組織中のサイトカインの測定を行う計画である。また、肺組織中のATP測定も行う予定としている。コロナ蔓延による実験への影響もあり、実験はやや遅れいてる印象があるが、ブタを用いた肺移植実験を行なっていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、肺保存前と肺保存後を比較するために、肺組織中のATP濃度の測定、肺浮腫の程度を測定するwet/dry ratio、組織学的な保存肺の評価を行う。肺組織中のサイトカインの発現をRT-PCRを用いて検討する。これは、炎症性サイトカインであるTNF alfa, IL-6, IL-8に加えて、肺保護に働くTGF betaを測定する。その後、保存した肺を用いた左片肺移植をブタに行なって、移植後のデータも収集する予定としている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額を用いて、実験を進める。実験に用いる消耗品の購入、動物の購入に当てる。
|
Research Products
(4 results)