2020 Fiscal Year Research-status Report
IRF発現調節とステルス化による有効な抗腫瘍T細胞輸注療法の開発
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19K09048
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
安井 潔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50372777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 裕明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40374673)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ステルスT細胞 / がん免疫 / T細胞輸注療法 / HLA-E / CD47 / IRFファミリー / NK細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子改変T細胞輸注療法は、がん抗原に特異的な受容体遺伝子を導入した腫瘍特異的T細胞を体外で増殖させ、患者に輸注することでがんを特異的に攻撃する治療法であるが、疾患や患者により有効性が不十分であり、輸注するT細胞の分化、メモリー形成能、エフェクター機能が治療成績へ大きな影響を与えることが明らかになりつつある。本研究では、T細胞の機能・分化・増殖に関連する因子であるとされるIRFファミリーの発現を人為的に調節して有効性が高い腫瘍特異的T細胞を作製し、我々が開発をすすめる非自己T細胞利用を可能とするステルスT細胞技術(内在性TCRの発現をsiRNAで抑制することにより組織障害を防ぎβ2マイク ログロブリン(B2M)をゲノム編集で消去し、内在性TCR/MHCを持たず、宿主に排除されない)と組み合わせ、多くのがん患者に適用可能な抗腫瘍T細胞輸注療法を開発を目指す。
2020年度には、以下の研究実績が達成された。 (1) Jurkat細胞およびαβ-T細胞にレトロウイルスおよびB2Mノックアウト用のレンチウイルスを感染させて作製したMHC±、HLA-E±の細胞を用い、MHC消去でアロT細胞への刺激が減少すること、それに付随するNK細胞からの攻撃をHLA-Eの発現により抑制できることを示した。(2)培養条件によりIRF4の発現を抑制する方法を示した。(3)ステルス性に関与すると考えられるCD47をクローニングし、発現レトロウイルスベクターの作製を行った。(4)輸注T細胞としてγδ-T細胞を用いることを視野に入れ、γδ-T細胞におけるMHCの発現抑制、HLA-Eの発現を行い、γδ-T細胞においてもMHC抑制でアロT細胞への刺激が減少することを明らかにした。またγδ-T細胞を用いた担癌マウスの治療実験を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MHC抑制でアロT細胞への刺激が減少すること、それに付随するNK細胞からの攻撃をHLA-Eの発現により抑制できる可能性を示した。
Jurkat細胞、αβ-T細胞およびγδ-T細胞でMHC、HLA-E、IRF4、CD47の発現を人為的に調節できる系の構築を完了した。
これらのことから、次年度のステルスT細胞を用いたT細胞輸注療法の開発のために 必要な、細胞のエフェクター機能やその他の性質、及び各種腫瘍に対する治療効果の評価のための準備は整ったと考える。 以上の進捗状況より、おおむね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.IRF4の発現が細胞のエフェクター機能やその他の性質、及び各種腫瘍に対する治療効果にどのように関与するかを細胞表面マーカーやマウスを用いたin vitro、in vivoの系で評価する。 2.MHC、HLA-E、CD47分子を細胞表面に発現させることに成功しているので、アロT細胞、NK細胞、貪食細胞からの攻撃回避との関連をin vitro、in vivo双方の系で検証してゆく。
さらに、上記を組み合わせることにより、さらに有効性が高く、多くのがん患者に適用可能な抗腫瘍T細胞輸注療法を開発することを目指す。
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Causes of Carryover |
計画的に使用したが、(1)コロナウイルスの影響により一部予定どおりに使用できなかった。(2)進捗状況から、マウス、細胞培養に必要な経費に比べ生化学的実験に必要な経費が占める割合が多くなった。という2点の理由より次年度使用額が生じた。 次年度使用(予定)額は、マウス、細胞培養の経費に充てる予定である。
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