2021 Fiscal Year Research-status Report
巨大結腸症を呈するモワット・ウィルソン症候群類似疾患の新規病因遺伝子の同定
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19K09062
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Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
山田 憲一郎 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 遺伝子医療研究部, 主任研究員 (30291173)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 知的障害 / 特徴的な顔貌 / TBX1 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに対象患者全員の全エクソーム解析を行い、まだ病因となる異常を同定できていない患者について、エクソーム解析のデータの絞り込みを進めた。特にマウスモデルやヒトのデータベースから、本症で想定される発症機序の一つである神経堤細胞の分化及び遊走に影響を及ぼす遺伝子のリストを作成し、その遺伝子について、両アリルに機能喪失型またはミスセンス変異が見られる遺伝子(ヘテロコンパウンド)を検索した。さらに、それらが複数の患者に共通していることを加えて絞り込んだが、現在までに有力な候補遺伝子に至っていない。 前年度までに、TBX1遺伝子に同一のミスセンス変異を同定した2症例の解析を引き続き行なった。同定したミスセンス変異は、特徴的な顔貌と知的障害を呈するvelo-cardio-facial syndrome (DiGeorge症候群)患者で報告されている変異と同一であった。この中の患者1には、16番染色体の染色体欠失も同定された。同定された16番染色体の欠失領域には、片側アリルの欠損により疾患を引き起こす遺伝子は含まれていなかったが、患者1の知的障害は患者2に比較して重度であるため、欠失領域に含まれる神経機能に関連する遺伝子の欠損により、患者1の知的障害が増悪している可能性が考えられた。一方、患者に共通して同定されたTBX1のミスセンス変異は、TBX1の転写抑制機能の低下を引き起こすことが報告されており、両患者の病因と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、対象患者全員の全エクソーム解析を行い、既知の精神運動発達遅滞の病因遺伝子に当たるものとして、3例の病因遺伝子(ZEB2, TBX1)を同定し、確定診断につなげることができた。後者の2例はDiGeorge症候群であった。後者の2例については、変異がTBX1の機能に及ぼす影響の解析を進めている。 まだ病因となる異常を同定できていない患者について、エクソーム解析のデータの絞り込みを進めた。特にマウスモデルやヒトのデータベースから、本症で想定される発症機序の一つである神経堤細胞の分化及び遊走に影響を及ぼす遺伝子のリストを作成し、その遺伝子について、両アリルに機能喪失型またはミスセンス変異が見られる遺伝子(ヘテロコンパウンド)を検索した。さらに、それらが複数の患者に共通していることや、遺伝子の機能、発現部位や変異の発生頻度などを考慮し、いくつかの遺伝子を候補として検出した。しかし、それらの候補遺伝子の異常をサンガー法によりゲノムシークエンスを確認したところ、いずれもエクソーム解析で検出された変異が見られず、現在までに確定診断に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソーム解析の結果から確定診断に至ったTBX1ミスセンス 変異の2症例の結果を論文にまとめる。 同定したTBX1のミスセンス変異は、特徴的な顔貌と知的障害を呈するvelo-cardio-facial syndrome (DiGeorge症候群)患者で報告されている変異と同一であった。このミスセンス 変異は、心臓疾患の患者で報告されているが、本研究の対象患者のように主訴が特徴的な顔貌と知的障害の患者では報告がない。すなわち、本ミスセンス 変異は、心臓疾患だけでなく、知的障害の病因にもなりうることを示している。2022年度は、引き続き本ミスセンス 変異がTBX1の機能、特に細胞増殖に与える影響や、結合する因子との結合能に及ぼす影響の解析を進め、現在までに得られている結果と合わせて、本症例の解析結果を論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
現在、エクソーム解析の結果から確定診断に至ったTBX1ミスセンス 変異の2症例の解析結果を論文にまとめる作業を行なっている。2021年度中には、完成できなかったため、確認実験や論文投稿に必要な諸経費を次年度に持ち越した。
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