2020 Fiscal Year Research-status Report
Th17細胞との相互作用は乳癌細胞に増殖シグナルを伝達するか?
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19K09065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 貴 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10261629)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳癌 / IL-17 / 増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下の通りである。 1.ヒト乳癌組織を用いたCLEC2Dの発現意義に関する病理組織学的検討について:症例を80例ほど追加してCLEC2Dに対する免疫染色を施行し、臨床病理学的因子との関連について再解析を行った。症例を増やしたことによりCLEC2D陽性症例は再発しやすく予後不良であることことを統計学的に確かめることができた。また、細胞増殖能(Ki67)との相関関係もより強く認められた。 2.CLEC2DとCD161の分子間相互作用の検討に関して:CLEC2DとCD161相互作用の検証のためのリコンビナント蛋白の作製・精製のためのプラスミドのコンストラクションには成功したが、HEK293細胞に導入しても目的の蛋白を得ることが未だできていない。自家調製をあきらめ、リコンビナント蛋白の購入(もしくは外注)を検討している。 3.IL-17Aが乳癌細胞の増殖、浸潤に与える影響の解析:CD161陽性免疫細胞とCLEC2D陽性乳癌細胞の直接的相互作用にこだわらず、液性因子IL-17を介したシグナル伝達が乳癌の増殖並びに浸潤に対してどのような影響をもたらすか検討を行った。IL-17Aをトリプルネガティブ乳癌細胞(MDA-MB-453、MDA-MB-231、HCC38)に添加して細胞増殖試験および創傷治癒試験を行ったところ、IL-17Aはこれの細胞の増殖には関与しなかった。一方、MDA-MB-231に対してのみ、IL-17Aは遊走能を亢進させる作用があることが分かった。この理由に関し、IL-17Aに対する受容体の発現量の違いが関係している可能性を考え、受容体の発現量を定量PCRおよびウェスタンブロットで検証する実験に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫組織化学的検討については、CLEC2Dの臨床病理学的特徴を捉えられたことから順調に推移していると考える。また、ERの発現の有無や術後治療別の層別解析に耐える症例数になったので、様々な角度から追加解析が可能になった。 CLEC2DとCD161の相互作用に関する研究はリコンビナント蛋白の精製ができず遅滞が生じているが、既製品の購入もしくは外注により打開を図りたい。 IL-17Aの乳癌の進展における機能解析を進めることができ、IL-17Aが、乳癌の中でも特に悪性度の高いトリプルネガティブ乳癌の浸潤・転移に関わる可能性を培養細胞を用いた実験から見出すことができた。一方、用いたトリプルネガティブ乳癌の培養細胞のうち、遊走能の変化が観察できたのが一株のみであったことから、IL-17Aが浸潤・転移に関わるのはトリプルネガティブ乳癌のなかでも一部に限られる可能性も同時に示唆され、今後の検討課題と考えられた。 現在、IL17Aの免疫染色の条件検討を進めている。陽性対照組織(脾臓、リンパ節)を用いた予備検討では良好な染色性が得られており、次年度に予定している乳癌組織に浸潤するIL-17A陽性細胞(Th17細胞)を病理組織学的に評価する準備が整いつつある。 IL-17Aの受容体の発現を検討することも必要と考えられ、プライマーや抗体、siRNA等の準備を始めている。来年度中にIL-17A受容体に対する免疫染色や機能解析が進められると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
CLEC2D-CD161の相互作用に関する研究は、手法を変えつつ継続的に取り組んでいきたい。また、IL-17Aの機能解析(増殖試験、遊走能試験)の再現性確認実験を鋭意進めていくとともに、IL-17Aによって調節を受ける遺伝子についても探索をしていく。IL-17Aと腫瘍組織内への好中球の浸潤と関連することが報告されていることから、好中球の走化性因子(CXCLファミリー)に着目して精査を進めていく予定である。これに関し、遺伝子の発現調節を担う転写因子の活性化についても検討を行う予定で、既報から有力とされるNFkBシグナルの活性化の有無も検討していく。 IL-17Aの免疫染色は条件検討が済み次第、着手する。症例はCLEC2Dの染色を行った症例とする。受容体の免疫染色の準備も進めていき、CLEC2D/IL17A/IL17A受容体の発現状態を総合的に解析していく。IL17Aによる好中球走化性因子の発現制御の可能性について一定の知見が培養細胞実験から得られたならば、好中球マーカーに対する免疫染色をおこなって乳癌組織に浸潤する好中球の評価も行いたい。IL17Aによる好中球の遊走制御をモデル系で確認できればと思うが、好中球は寿命が短くin vitoでの実験が難しいことが予想される。可能であればマウス移植モデルを構築して実験を行いたい。現在、CLEC2Dの臨床病理学的意義およびその機能解析で得られた知見をまとめ、論文投稿準備中であり、今年度中の投稿を目指している。
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Causes of Carryover |
CLEC2DとCD161の相互作用の検討のためのリコンビナント蛋白の調製が進まず、これを用いて行う予定だった実験が進められず余剰が発生した。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴う所属機関BCPレベルの引き上げによって実験に従事できる時間が制限されたことも余剰発生の一因である。 発生した余剰については、新たに検討を行うこととしたIL17受容体の免疫染色に係る消耗品代に充当する予定である。
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[Journal Article] Enhancer remodeling promotes tumor-initiating activity in NRF2-activated non-small cell lung cancers2020
Author(s)
Okazaki Keito,Anzawa Hayato,Liu Zun,Ota Nao,Kitamura Hiroshi,Onodera Yoshiaki,Alam Md. Morshedul,Matsumaru Daisuke,Suzuki Takuma,Katsuoka Fumiki,Tadaka Shu、Motoike Ikuko,Watanabe Mika,Hayasaka Kazuki,Sakurada Akira,Okada Yoshinori,Yamamoto Masayuki,Suzuki Takashi,Kinoshita Kengo,Sekine Hiroki,Motohashi Hozumi
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 11
Pages: -
DOI
Open Access
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[Presentation] 乳癌におけるアミノ酸代謝の重要性と新規治療標的としての可能性2020
Author(s)
佐藤 未来, 原田 成美, 宮下 穰, 甘利 正和, 蘇我 朋義, 鈴木 貴, 内藤 剛, 海野 倫明, 亀井 尚, 笹野 公伸, 石田 孝宣
Organizer
第120回日本外科学会定期学術集会
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