2020 Fiscal Year Research-status Report
小児小腸組織から樹立する上皮オルガノイドの組織構築能解析
Project/Area Number |
19K09083
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
古賀 寛之 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (30468574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山高 篤行 順天堂大学, 医学部, 教授 (40200703)
松本 有加 順天堂大学, 医学部, 助教 (50813672)
中村 哲也 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (70265809)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒト腸上皮オルガノイド / 新生児腸疾患 / 腸再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、広範囲腸切除の結果、発症する重篤な小児短腸症候群の新規治療として、患者自身の組織に由来する培養細胞を用いた腸再生医療の開発を目指した基礎研究である。本研究は小児を研究対象者とした臨床研究であるため、初年度に臨床研究の倫理審査を承認を得て研究を開始した。数人の患者から得た検体を用い、切除腸組織より腸上皮細胞単離し、腸上皮オルガノドとして体外培養が可能な方法を見出した。本年度は、培養が安定したオルガノイドについて、細胞増殖に関わる重要な因子であるR-spondin1、Wnt3aを異なる濃度で組み合わせて培養液に添加し、乳児小腸組織由来のオルガノイド培養に最適化させた。さらに患者の年齢、切除の原因となった腸疾患による障害の程度、また十二指腸から回腸までのどの領域の腸組織由来かなど、様々な性状の腸組織からの培養を行ない、見出した単離方法と培養条件が検体側の要因によらず適用可能な方法であること確認した。現在、オルガノイドと由来組織の性状を比較解析を進めている。また切除後の組織を、増殖因子を含まない基礎培地中で冷蔵する簡易な方法で保存し、一定時間経過したのちに腸上皮細胞の単離・培養操作を行なった。その結果、数日保存した腸組織からでも培養可能な腸上皮がえられ、継代により増幅が可能であることを見出した。初年度の臨床研究の承認は本学で手術を受けた患者のみを対象として承認を得たが、これを多施設共同研究として追加申請を行い、倫理審査委員会の承認をえた。現在、遠方施設からの輸送に際しての検体処理方法などについて検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は臨床研究審査で承認を得た後、ある程度安定的に研究対象症例を得ることができたが、年度末から本年度初めにかけては、新型コロナウィルス感染拡大の影響で手術が延期となり、症例数の減少が見られた。また培養に必要な試薬、物品も一部確保困難となり、実験遅延の原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
多施設共同研究の追加申請を行い、承認されたため、今後は参画した遠方の施設で腸切除手術を受けた患者の腸組織を研究に用いて症例数を増やすことを目指す。その際、いかにして移送の影響を軽減するか、他施設での検体処理の方法や保存・移送方法を確立する。これと並行して、様々な性状の腸組織より形成したオルガノイドと由来組織について、組織学的解析や遺伝子発現解析を行い、性状の比較解析を行う。また、ヒト乳児由来のオルガノイドを成体マウスの腸移植した場合に、どのような挙動を示すかの解析を目指し、免疫不全マウスの導入や、緑色蛍光蛋白質(GFP) を組み込んだ遺伝子改変ヒトオルガノイド作成などを計画に着手する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で手術が延期となり、症例数の減少が見られた。また実験に必要な備品や試薬の購入が困難になったものもあり、実験実施を一時期制限せざるを得なくなった。現在、手術件数も増加し、代替品の確保の目安もついた。また多施設共同研究の承認を得たため、次年度には、参画施設から検体を移送する方法、処理方法などの条件検討実験と、参画施設から得た検体からオルガノイドを培養実験、さらに本学で得た検体由来のオルガノイドと合わせて遺伝子発現解析実験に使用する計画である。
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