2019 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイント阻害剤の汎用性向上の為の異所性リンパ濾胞誘導法の確立
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19K09110
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Research Institution | Kanagawa Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
五十嵐 友香 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 技師・研究員 (10531692)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 異所性リンパ濾胞 / 腫瘍微小環境 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ濾胞形成誘導のツールとして、濾胞形成に関与するという報告のある目的ケモカインを強制発現するがん細胞株を作成し、目的ケモカイン産生能を評価すすめている。すでに樹立している乳がん細胞株(4T1)および悪性黒色腫(B16F10)に加え、新たに大腸がん細胞株(MC38, CT26)を樹立した。これらをin vivoに投与(s.c.)し腫瘍の増勢およびTILを評価している。また現在、肺がん細胞株(LLC)のtransfectantの樹立もすすめているところである。TILの評価方法としてはこれまで腫瘍組織を消化しリンパ球を分離し、FACSを用いてポピュレーションの割合などを評価してきているが、腫瘍内リンパ球については含有量(率)だけでなく濾胞形成の有無や局在も同時に評価するために腫瘍組織の一部からホルマリン固定組織切片を作成し、CD3やB220 抗体を用いて免疫組織染色を行うこととした。一部のサンプルにおいては腫瘍壊死を取り囲むようにリンパ球が存在していたり、またはT細胞とB細胞の分布に違いがあるような像が検出できており、新たな情報が得られていると考える。また、すでに幾つかの論文でも報告があるが、マウスを用いた皮下腫瘍モデルでは人為的にリンパ濾胞を誘導することが難しく、一方腹腔内投与モデルでは濾胞形成が確認できたとされている。そこで本研究においても皮下腫瘍モデルに加え腹腔内投与モデルも同様に解析することとした。腹腔内のどのような因子が濾胞形成に関与しているのかを明らかにすることで皮下腫瘍という濾胞形成が困難なモデルでも効率的に誘導可能になる方法が確立できると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な癌腫およびさまざまな目的ケモカインの発現を有するがん細胞を用いて網羅的に解析することおよびいくつかの目的ケモカイン発現がん細胞株を組み合わせて評価することが必要であるという考えが本研究の根底にある。現在、目的ケモカイン発現腫瘍株のラインが複数樹立できておりまたそれら細胞株単独での腫瘍の増勢の評価もだいぶ進んでいる。今後これらの細胞株を複数組み合わせて実験を行うことで当初予定していた研究計画が遂行可能であると考えられる。またリンパ濾胞形成の評価の方法として、新たに免疫組織染色を組み合わせることでより研究の質がより向上できていると考えられる。さらに、新しく腹腔内に腫瘍を移植するモデルも同時に解析を開始している。これについては腹腔内には腸間膜など多くのリンパ組織が存在しており、目的とするケモカインにより腫瘍内にリンパ濾胞が誘導されたのか、もしくは既存のリンパ組織の周囲に腫瘍ができたことによる巻き込みなのかを区別する方法が課題になっており新たな評価方法を追加する必要があると考え現在模索しているところである。概ね計画したスケジュールに沿って順調に研究が遂行できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
順調にツールが準備できてきていることから実際にin vivo試験を精力的にすすめることで複数の目的ケモカインの組み合わせについて評価する。さらにこれまで報告があるケモカインについても組み合わせることにより効果が得られる可能性があるため、がん細胞株への遺伝子導入を行う予定である。腹腔内に投与した腫瘍でリンパ濾胞が形成されているかを皮下腫瘍と比較する。リンパ濾胞が形成可能な腹腔内投与モデルが樹立できれば、皮下腫瘍とリンパ濾胞を含む腹腔内腫瘍のタンパク解析やRNAseqなどによりどのような因子が動いているのかを評価することで今後候補とする目的ケモカインの選択基準として利用できることが期待される。
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