2020 Fiscal Year Research-status Report
腹膜播種の成立における好中球細胞外トラップの意義―宿主免疫側からの検討
Project/Area Number |
19K09131
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
宮戸 秀世 自治医科大学, 医学部, 講師 (90813163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
細谷 好則 自治医科大学, 医学部, 教授 (30275698)
大澤 英之 自治医科大学, 医学部, 講師 (60458271)
井上 賢之 自治医科大学, 医学部, 講師 (80375279)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 好中球細胞外トラップ / 腹膜播種 / 免疫 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 末梢血好中球は、PMA,LPS, LPAにてもNETsの産生が誘導されることがわかった。PMA刺激で好中球細胞外トラップ(NET)を作成、末梢血中単球と3日間混合培養したところ、CD80が有意に上昇し、CD163などのM2マーカーの発現は抑制された。また、上清中のTNF-alphaの産生が亢進し、NETsはM1への分化を促進する傾向が見られた。 2. NETはCD3抗体で2日間刺激したT細胞のCXCL10, CXCL11を添加し、6時間後遊走能を評価したところ、NETsは有意に遊走を抑制したが、その効果はDNAse1によるNETの分解で消失しなかった。また、NETと活性化リンパ球を共存させタイムラプス動画で撮影すると、NETs存在部へのリンパ球の侵入が抑制されることが確認できた。PMA刺激好中球由来のNETsから上清およびNETs成分(NETs stock)を分離し、リンパ球に添加したところ、共に遊走を強く抑制した。このNETsを加熱し、たんぱく変性を起こさせると、リンパ球遊走抑制作用は完全に解除され、NETs中に含まれるタンパク成分がリンパ球の遊走を抑制していると考えられた。また、ウエスタンブロッティングにてNET成分によりCXCL11が分解されることが確認された。 3. NETから培養液の上清およびNET成分(NET stock)を分離し、それぞれを胃癌細胞NUGC-4, 卵巣癌細胞Shin-3に添加すると、共に癌細胞の遊走を促進する作用を持っていたが、加熱処理にてたんぱく変性を起こさせると、遊走促進作用は完全に抑制された。 4.NETを抗癌剤パクリタキセル、アドリアマイシンと共培養すると、抗癌剤がNETにトラップされ、transwellを使用し、上層へ拡散を測定するとこれらの抗癌剤の拡散は抑制され、この作用はDNAseにより解除された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダブルチャンバーを用いた遊走実験とタイムラプス動画を用いた実験で、NETsが活性化リンパ球の遊走を物理的に阻害する作用を持つことも確認できた。さらに、PMA刺激好中球が産生するNETsは、リンパ球の遊走を抑制することがわかった。この機序として、NETs中に含まれるタンパク分解酵素によりCXCL11を含めたリンパ球遊走因子が分解されることが考えられた。以上の事実から、がん組織内のNETsはがんに対する局所免疫に対して大きな影響を与えていることが強く推測される。 また、NETsの抗癌剤に対する影響については、NETsにより抗癌剤の拡散は抑制され、この作用はDNAseにより解除されたことから、NETsが抗癌剤をトラップすること、NETsにより抗癌剤の効果が減弱する可能性が示唆され、抗癌剤の抗腫瘍効果に対してもNETsは影響を与えている可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
PMA刺激好中球由来のNETsが癌の遊走能を促進する作用を持つことに関して、今後、PMA以外の物質(LPS, LPA)によりNETを産生させた場合に、NETsが胃がん細胞の遊走を亢進させるかを調査する。また、RAC, RHOなどの運動関連タンパクの阻害剤を用いて、運動亢進をきたす分子機序を明らかにする。また、NETと共培養した癌細胞と親株の表現型、増殖、浸潤能や幹性の変化や抗癌剤感受性を検討し、NETが癌細胞にどのような形質変化をもたらすかを検討する。 また、PMA刺激好中球由来NETがリンパ球遊走を抑制する作用の原因に関して、好中球に対し好中球エラスターゼインヒビター、MMPインヒビター, PAD4インヒビターなどを作用させることによりリンパ球遊走抑制作用がどのように変化するかなどを調べる。 また、卵巣癌組織の免疫組織化学染色を行い、腫瘍内への好中球(CD66b陽性細胞)の浸潤の程度、好中球における、NETの産生状況(シトルリン化ヒストン3)、腫瘍内へのリンパ球(CD3、CD4、CD8)やM1/M2マクロファージの浸潤や線維化の程度に関する調査を行う予定である。 腫瘍細胞の単層培養あるいは、spheroid培養を行い、抗癌剤(パクリタキセル、アドリアシン、シスプラチン )単独、あるいはNETを同時に添加することにより抗癌剤の抗腫瘍効果が減弱するかを確認する。これが確認できた場合は、ヌードマウスに腹膜播種を形成させたときに、抗癌剤の抗腫瘍効果がNETによりどう変化するかを調べる。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りに使用している。 未使用額については、2021年度物品費として使用予定である。
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[Presentation] Intraperitoneal paclitaxel treatment combined with SOX for gastric cancer with peritoneal metastasis2020
Author(s)
Shin Saito, Hironori Yamaguchi, Hideyo Miyato, Shiro Matsumoto, Rihito Kanamaru1, Hidenori Haruta, Kentaro Kurashina, Yoshinori Hosoya, Lefor Alan, Naohiro Sata, Joji Kitayama
Organizer
第92回日本胃癌学会総会