2022 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞ゼブラフィッシュ移植モデルによるアッセイ系の構築~膵癌克服への布石~
Project/Area Number |
19K09135
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
朝隈 光弘 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (40559390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小村 和正 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (10789853)
廣瀬 善信 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (20293574)
小野 富三人 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (70743996)
谷口 高平 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70779686)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 膵臓がん |
Outline of Annual Research Achievements |
患者由来がん細胞移植(Patients-derived xenograft: PDX)は、患者由来の遺伝的特徴や不均質(Heterogeneity)を保持し、がん関連線維芽細胞・腫瘍随伴マクロファージなどの、がん微小環境を含んでおり、細胞株の二次元培養よりも臨床を反映するとされている。移植モデルとしては免疫不全マウスが使用されることが多いが、本研究では、透明で生体内動態観察に優れたゼブラフィッシュの高いがん生着能に注目し、がん移植モデルとしての応用を試みる。マウスと比較して低コストで生産能の高いゼブラフィッシュモデルが、生体内におけるがん細胞の動態(生着・転移・増殖)と、周囲組織の微小環境を定量化し、抗がん剤の効果予測ツールとなり得るか評価する。本研究では最も予後不良な悪性腫瘍の一つである膵臓がんについて、ゼブラフィッシュ移植モデルでのがん細胞の動態を観察・評価することで予後の改善に繋がる知見を得ることを目標としている。移植に使用するゼブラフィッシュ稚魚は透明であるため、がん細胞移植後に生体内でのがん細胞と宿主の相互作用を観察できる。この特徴に着目し、膵臓がんの特徴である神経浸潤の機序を解明するため、まず神経管内にがん細胞を移植する技術の確立を目指した。手技の検討を行い、がん細胞のゼブラフィッシュ稚魚の神経管内への移植に成功した個体の選別が可能であることを見出した。これにより効率的に移植後に観察する個体を選別することができ、がん細胞が神経管内に定着する条件やそれに関わる分子を検討できるようになった。解析を進めることで膵臓がんの神経浸潤を抑制する治療法の開発に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵臓がんを移植したゼブラフィッシュの生体内で観察するため、まずレンチウイルスを用いてGFP遺伝子をヒト膵癌由来細胞(Panc-1)に導入した。ここで膵臓がんにおいて臨床上問題となることの一つに神経への浸潤があることに着目し、膵臓がん細胞のゼブラフィッシュの神経管内への移植を試みた。ゼブラフィッシュ神経蛍光モデルの脊髄の近傍に膵臓がん細胞を移植し、移植後3日で移植がん細胞と神経細胞の関連を解析した。光学顕微鏡での観察では、膵臓がん細胞の神経管内への生着が確認され、病理学的にも観察を行ったところ、神経管内にがん細胞の定着しているところが観察された。この現象を手技的な面から考察し、色素を注入する実験を行ったところゼブラフィッシュの神経管内に意図的にがん細胞を移植することが可能であると判明した。また神経管内に膵臓がんを移植した稚魚は高確率で7日程度生存し、現在も実験系として広く使用されている卵黄嚢へ移植した個体と比較しても高確率にがん細胞の定着を認めることが確認された。 移植後に膵臓がんの神経浸潤に関連する分子の免疫染色を試みたが、膵臓がん細胞、神経細胞、標的とする分子の三重染色となり、条件設定に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
膵臓がん移植モデルを蛍光顕微鏡で三次元的に撮影し、移植がん細胞を定量化して、経時的な細胞の増減に関する記録を進めた。既存の膵臓がんに対する抗癌剤を投与した際の、膵臓がんの薬物治療への応用を検討する計画である。Zebrafishは薬剤に浸すことでその効果を容易に判定でき、遺伝子編集やモルフォリノを使用することで、特定の分子を阻害する技術が確立されているため、膵臓がんの神経浸潤に対する薬物治療の効果判定や、がんの浸潤を抑制する分子を解析し、創薬に発展させることが期待される。また、共焦点顕微鏡で移植がん細胞を詳細に観察すると、がん細胞が突起を出すような形態変化を認めた。移植モデルをタイムラプスで撮影すると、移植後24時間程度で膵臓がん細胞が表面から突起を出すように活発な形態変化をする様子が観察できた。共焦点顕微鏡による詳細な観察では、膵がん細胞周囲に神経細胞の蛍光は観察されず、グリア細胞などの他の細胞の存在が示唆された。これを検証するため、グリア細胞の免疫染色を行なっている。この他に、これまでに膵臓がんの神経浸潤に関連すると報告されている分子がこのモデルで発現しているかどうかの免疫染色による検証を進めている。
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Causes of Carryover |
本年度は実験モデルとしての確立を目指してゼブラフィッシュへのがん移植実験を行ってきたが、その詳細な解析には至らず次年度使用額が生じた。今後はさらに移植したがん細胞に対する生態の反応として好中球やマクロファージが蛍光標識されたゼブラフィッシュを使用する予定である。 また、免疫染色によってがん細胞とグリア細胞の相互作用や、がん定着の誘因となる分子の解析、移植モデルに対する抗癌剤の効果判定も進める。次年度はそれらの費用に研究費を使用する予定である
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Research Products
(2 results)