2019 Fiscal Year Research-status Report
Identification of biomarker in intrahepatic recurrence of hepatocellular carcinoma through extracellular vesicles
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19K09146
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野田 剛広 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50528594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 肝内転移 / エクソソーム / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、肝細胞癌において、腫瘍細胞由来エクソソームを介した前転移ニッチ形成機構の解明と、中心的役割を果たすmiRNAの同定・機能解析により肝細胞癌患者の予後を改善することである。 当該年度においては、樹立した肝高転移能株(HuH7-M)を用いて、親株(HuH7-P)の機能比較を、MTT assay, invasion assay, transendothelial migration assay, sphere formation assay, Annexin V analysisを行った。また、HuH7-PとHuH7-Mの細胞培養上清よりそれぞれエクソソームを抽出し、エクソソームの腹腔内投与により、親株の脾臓内投与による肝への腫瘍形成率を検討した結果、高転移能株より抽出したエクソソームの投与群にて、腫瘍形成率の増加を認めた。エクソソームによる網羅的なmiRNAの発現解析を行い、HuH7-PとHuH7-Mの2群間にて比較検討を行った。 当該年度における研究結果は、HuH7-PとHuH7-Mをin vitroで比較すると増殖能の亢進、apoptosis、anoikisの抑制を認めた。浸潤能、遊走能の変化は見られなかった。また、HuH7-PとHuH7-Mのそれぞれの培養上清よりエクソソームを抽出し、転移能の変化をin vivoで検討したところ、HuH7―P由来のエクソソーム投与群では腫瘍の形成を認めなかったのに対して、HuH7-M由来エクソソーム投与群において腫瘍生着率の増加を認めた。HuH7-P, HuH7-M由来エクソソームをmicroarray解析し、HuH7-M由来エクソソームで発現上昇を認めたmiRNAの同定・解析を現在実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度(令和元年度)の研究実施計画においては、①肝細胞癌高転移能株の樹立、②エクソソームを介した前転移ニッチ形成の検証、および③エクソソームの機能・網羅的発現解析を行う予定であった。高転移株の樹立およびエクソソームの機能解析および網羅的発現解析は実施できており、現在miRNAについてさらに絞り込みを行っている。高転移株の機能解析において、親株と比較して増殖能の亢進、apoptosis、anoikisの抑制を認めた。エクソソームを介した前転移ニッチ形成の検証については、ヒト臍帯血管内皮細胞株(HUVEC)を用いたin vitroの実験を現在進行中である。蛍光ラベル標識したエクソソームのHUVECへの取り込みは確認終了している。エクソソームの機能解析においては、in vivoにおけるエクソソームの腹腔内投与により、親株由来エクソソーム投与群では腫瘍の形成が認められないのに対して、高転移株由来エクソソーム投与群において有意に腫瘍形成能の増加を認めた。これらは複数回の実験によりその再現性は確認できている。In vivoによる実験に時間を要したため、前転移ニッチ形成の検証がやや遅れているものの、網羅的なmiRNAの発現解析についてはほぼ終了している。現在同定されたmiRNAについて、その絞り込みおよび機能解析を行っている。 このように、肝細胞癌肝内転移の分子メカニズムにおいて、腫瘍細胞より分泌されるエクソソームを介した前転移ニッチ形成機構の存在という仮説を裏付ける結果が出つつあり、研究の進捗としては概ね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書における令和2年度の研究計画では、①エクソソームを介した前転移ニッチ形成の検証、②エクソソームの機能・網羅的発現解析、③臨床検体による解析としていた。 平成31年度(令和元年度)の研究結果を踏まえ、令和2年度においては、エクソソームを介した前転移ニッチの検証をまず行う予定である。具体的には、エクソソーム投与によるHUVECによる形態の変化、細胞間接着に関するZO-1やVE-cadherinなどのmRNAや蛋白発現について、解析を行う。これらの細胞内局在に関しても、免疫細胞染色により解析を行う。それとは並行した網羅的なmiRNA発現解析により高転移能株にて発現の差が見られたmiRNAを同定し、絞り込みを行う。絞り込まれたmiRNAについても、HUVECに対する遺伝子導入による機能解析を進めていく予定である。エクソソームの機能・網羅的発現解析については、ほぼ終了している。臨床検体による解析に関しては、In vitroにて検証されたmiRNAについて、当科にて保存されている肝細胞癌患者血清におけるmiRNAの発現解析を行う予定である。現在保存されている血清は200例に上るが、前治療の有無や再肝切除例、根治切除例などを除外した症例にて臨床病理学的因子とmiRNAの発現との比較検討、および無再発生存や全生存期間に関する検討を行う予定である。保存されている血清中のmiRNAのクォリティーについては、実験前に並行して確認を行う予定である。
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Causes of Carryover |
前治療の有無や再肝切除例、根治切除例などを除外した症例にて臨床病理学的因子とmiRNAの発現との比較検討、および無再発生存や全生存期間に関する検討を行う予定である。保存されている血清中のmiRNAのクォリティーについては、実験前に並行して確認を行う予定である。
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