2020 Fiscal Year Research-status Report
Identification of biomarker in intrahepatic recurrence of hepatocellular carcinoma through extracellular vesicles
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19K09146
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野田 剛広 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50528594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 肝内転移 / エクソソーム / microRNA / miR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、肝細胞癌において、腫瘍細胞由来エクソソームを介した前転移ニッチ形成機構の解明と、中心的役割を果たすmiRNAの同定・機能解析を行うことである。 当該年度においては、HuH-7P細胞とHuH-7M細胞の培養上清よりエクソソームを回収し、経脾臓HuH-7P投与後の肝内腫瘍形成を確認した。非腫瘍部におけるVE-cadherinとZO-1の発現を蛍光免疫組織染色で評価した。血管内皮細胞(HUVEC)に対し、エクソソーム添加後のVE-cadherinおよびZO-1の発現変化を評価した。血管透過性の変化をpermeability assayで評価した。HuH-7P及びHuH-7M由来エクソソームにおけるmiRNAに関して網羅的発現解析を行い、シグナル比が2倍以上のmiRNAを同定した。肝細胞癌54例の術前血清中のエクソソームにおけるmiR発現を評価し、臨床病理学的解析を行った。 結果は、HuH-7M由来エクソソーム投与群の非腫瘍部において、CD31陽性細胞におけるVE-cadherinとZO-1の発現低下を認めた。HuH-7M由来エクソソームを投与したHUVECにおいて、VE-cadherinとZO-1の発現低下と細胞透過性亢進を認めた。HuH-7M由来エクソソームにおいて22個のmiRNAの発現亢進を認め、miR-638、miR-663a、miR-3648、miR-4258をHUVECに強制発現させたところ、VE-cadherinとZO-1の発現低下、細胞透過性亢進を認めた。肝細胞癌患者の術前血清中エクソソームにおける各miRNAの発現値に関して、低発現群と高発現群の2群に分類した。miR-638高発現群において、無病生存期間の短縮を認めた。男性、PIVKA-II高値、多発腫瘍、miR-638高発現群の4つの因子が、無病生存期間における独立予後不良因子であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究実施計画においては、③エクソソームの機能・網羅的発現解析、④臨床応用への研究、を行う予定であった。エクソソームの機能・網羅的発現解析は完了し、HuH-7M由来エクソソームにおいて発現差を認める22個のmiRNAを同定した。その22個のmiRのうち、miR-638、miR-663a、miR-3648、miR-4258の4つのmiRにて、さらに分子生物学的機能解析を進めた。4つのいずれのmiRにおいても、VE-cadherinとZO-1の発現低下、細胞透過性亢進を惹起した。さらに、臨床検体を用いて、miR-638が再発予後マーカーとなりうることを示された。そのメカニズムとして、miR-638が血管内皮細胞のVE-cadherinとZO-1の発現抑制を介して細胞透過性の亢進を惹起することにより、前転移ニッチ形成を促進していると考えられた。臨床検体を用いた解析により、肝細胞癌患者の手術前血清中miR-638高発現群は、根治切除後の再発率が有意に高かった。患者背景に、偏りはなく、また腫瘍因子も均てん化されていることから、従来の腫瘍径や個数といった腫瘍因子とは異なる予後因子と考えられる。このように、肝細胞癌肝内転移の分子メカニズムにおいて、腫瘍細胞より分泌されるエクソソームを介した前転移ニッチ形成機構の存在という仮説を裏付ける結果が示されており、また研究成果を英語論文として発表した。以上より、研究の進捗としては予想より早く進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、これまでの研究成果を踏まえてさらに研究を深化させる予定である。前転移ニッチ形成において、血管内皮細胞が重要な役割を果たすことが明らかとなり、今後は血管内皮細胞に着目して研究を進めていく。これまでの研究成果から、非腫瘍部の血管内皮細胞がmiR-638により接着分子の発現変化を認めており、腫瘍細胞から分泌されるエクソソームによりその機能が変化していることが判明した。血管内皮細胞は、正常部の血管内皮細胞と腫瘍内の血管内皮細胞は、その性質・機能が異なっていることが考えられる。 令和3年度においては、非腫瘍部と腫瘍部の血管内皮細胞を分離培養する。今回しようしたマウスの皮下腫瘍モデルより、磁気分離法により血管内皮細胞を分離培養を行い、次世代シークエンスによりその網羅的発現解析を実施する。非腫瘍部と腫瘍部の血管内皮細胞の機能の全容を明らかにし、腫瘍部の血管内皮細胞の特異的マーカーの同定を行う。また、腫瘍部の血管内皮細胞の機能として、癌間質を構成する腫瘍浸潤リンパ球や癌関連線維芽細胞の機能を抑制あるいは促進している可能性が考えられる。そのためこれら癌間質構成細胞との相互作用を検討する。 令和3年度は、最終年度であり、もともとの研究実施計画で予定していた研究内容はほぼ終了している。残った期間および研究費用を、新しい研究分野への開拓や次の研究へと橋渡しになるように、有効に使用していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスによる緊急事態宣言の発令により、研究停止期間が発生し、研究の進捗状況に遅れが生じたため
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Research Products
(5 results)