2020 Fiscal Year Research-status Report
組織内不均一性を有するHER2陽性胃癌に有効な金ナノ粒子結合抗体薬物複合体の開発
Project/Area Number |
19K09148
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒田 新士 岡山大学, 大学病院, 助教 (60633758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 抗体薬物複合体 / 胃癌 / 組織内不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、3年の研究期間内に、組織内不均一性を有するHER2陽性胃癌に対する金ナノ粒子結合抗体薬物複合体の有効性を検討することを目的としている。抗体薬物複合体(ADC)としては、現在乳癌に対して臨床応用されているトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1、商品名:カドサイラ)を使用し、T-DM1に金ナノ粒子を結合した金ナノ粒子結合T-DM1(ATDM1)を作成した。治療群は、PBS・金ナノ粒子・T-DM1・ATDM1の4群で、細胞株は、HER2陽性ヒト胃癌細胞株(NCI-N87、MKN7)とHER2陰性ヒト胃癌細胞株(MKN74、GCIY)を使用した。2020年度には下記研究(Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ)を行う予定としており、その進捗を概説する。 Ⅳ.ATDM1のがん免疫に及ぼす影響:in vitroにおいて、NCI-N87に対してATDM1で治療後に培養上清を回収し、免疫原性細胞死のマーカーであるATPとHMGB1を測定したが、コントロール群と比較し有意な上昇を認めなかった。 Ⅴ.不均一なHER2発現胃癌細胞集団に対する治療効果(バイスタンダー効果):HER2陽性細胞株NCI-N87と陰性細胞株MKN74(蛍光標識あり)を1:1で共培養し、上記4群でそれぞれ治療したところ、ATDM1のみがMKN74細胞に対して有意に高い細胞障害性を示した。これは、ATDM1は直接的にMKN74細胞には取り込まれずに治療効果を示さないため、NCI-N87細胞に取り込まれて治療効果を示したのちに、その治療効果がMKN74細胞にも波及した(バイスタンダー効果)ことを示唆するものと考えられた。 Ⅵ.マウス皮下移植腫瘍モデルにおける治療効果:BALB/cヌードマウスにNCI-N87皮下腫瘍モデルを作成し、上記4群で治療を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ⅳ.ATDM1のがん免疫に及ぼす影響では、ATDM1の治療により、癌細胞から免疫原性細胞死のマーカーであるATPやHMGB1の放出が増加すると仮説を立てていたが、有意な上昇は認められなかった。現在のところ、ひとつの細胞株(NCI-N87)のみでしか確認をしていないため、今後MKN7など他の細胞株でも同様の実験を行い、普遍的な現象であるか否かの検証を行っていく予定である。 Ⅴ.不均一なHER2発現胃癌細胞集団に対する治療効果(バイスタンダー効果)に関しては、当初の仮説通りに、ATDM1でバイスタンダー効果の増強を認めた。今後詳細なメカニズムの解明に取り組む予定である。 Ⅵ.マウス皮下移植腫瘍モデルにおける治療効果に関しては、現在実験を進行中であり、2021年度も引き続いて実験を進めていく。 以上、当初の研究計画書の予定通りに進行しているため、おおむね順調に伸展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の通り、下記研究を主に遂行予定である。 Ⅵ.マウス皮下移植腫瘍モデルにおける治療効果 Ⅶ.マウス同所性移植腫瘍モデルにおける治療効果 また、Ⅳ.ATDM1のがん免疫に及ぼす影響に関しては、MKN7などの胃癌細胞株で実験を行い、また、Ⅴ.不均一なHER2発現胃癌細胞集団に対する治療効果(バイスタンダー効果)に関しては、バイスタンダー効果のメカニズム解析に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
実験消耗品の購入が当初の予定より安くすんだため、次年度繰越金が生じた。この繰越金は、次年度の実験消耗品に用いる予定である。
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