2019 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチンE3リガーゼをターゲットにした消化器癌の進展、転移制御機構の解明
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19K09164
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 勝規 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (00400987)
高屋敷 吏 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (30456024)
久保木 知 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (50571410)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
賀川 真吾 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90507302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 転移 / 上皮-間葉移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
2005年-2014年に当科で初回肝切除を施行した肝転移症例66例を対象として、肝転移巣とそのペアとなる大腸直腸癌原発巣切除標本の免疫染色を行いSmurf2発現について評価した。さらに、Smurf2の発現と臨床病理学的因子や予後との関係を解析し検討した。また、転移再発なし群(n=60)の大腸癌も免疫染色を行い、転移再発あり群とSmurf2発現を比較した。Smurf2は大腸癌原発巣において低発現、肝転移巣においては高発現が有意に多かった。また、転移再発なし大腸癌は転移再発あり大腸癌と比較して有意にSmurf2高発現が多かった。さらに、肝転移巣におけるSmurf2高発現群は低発現群と比較して有意に肝切除後の予後が良好であった(5yOS; 63.2m vs 33.5m, p=0.0392)。 これらの結果から、Smurf2はEMTを抑制制御する役割をもち、大腸癌原発巣ではSmurf2低発現であるとEMTにより癌細胞が間葉系形質に傾くため浸潤能や遊走能を獲得して転移再発を生じ、転移先の肝においてはSmurf2により上皮系形質を獲得して転移巣形成に働く、という仮説を立て、大腸癌細胞株を用いた実験を行った。大腸癌細胞株DLD-1、HT29、SW48、COLO201、SW620を培養し、これら細胞株におけるSmurf2発現をWestern blotにて評価した。さらに、Smurf2を高発現している細胞株であるDLD-1を用い、siRNAにてSmurf2のknock downを行った。Western blotにて上皮系マーカーであるE-cadherin、間葉系マーカーであるVimentinとSmurf2との相関関係を検討したが、これらに相関関係はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床サンプルを用いた検討では、免疫染色で評価したSmurf2の発現と予後に相関がみられた。Smurf2高発現が良好な予後と相関しており、当初の仮説(tumor supressorとしての役割)に沿う結果となった。in vitro では大腸癌細胞株を用いた実験を開始しており、SiRNAによるSmurf2のknock downは再現性をもって実行可能であることが確認できており、今後EMTにおけるSmurf2の関与に主に焦点を当て、実験を行っていく予定としている。以上のことから初年度の進捗としてはおおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目前半の目標は、大腸癌細胞株を用いたin vitroの実験をスピード感を持って進めることである。SiRNAによるknock down手技は確立しているため、これを用い、細胞増殖に対する影響をproliferation assayにて検討する。さらにapoptosis関連タンパク(Bcl family等)の発現についてWestern blotにて比較を行う。遊走能、浸潤能はTranswell chamberを用いたinvasion assay、migration assayやwound healing assayにより評価する。また、 EMTマーカー(E-cadherin, ZO-1,Vimentin, Snail, Slug, Fibronectin, N-cadherin等) の発現につきRT-PCR、Western blotにて評価する。さらに、上記実験で得られたデータに基づき、Smurf2によって制御を受ける下流タンパクの検索、発現の変化等についても検討を行う。これらの進捗状況にもよるが、後半はこれらに加え、マウスを用いたin vivoの実験準備も可及的に進めていく。
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