2020 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチンE3リガーゼをターゲットにした消化器癌の進展、転移制御機構の解明
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19K09164
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 勝規 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (00400987)
高屋敷 吏 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (30456024)
久保木 知 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50571410)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
賀川 真吾 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90507302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 転移 / 細胞遊走能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2005年-2014年に当科で初回肝切除を施行した肝転移症例66例を対象として、肝転移巣とそのペアとなる大腸直腸癌原発巣切除標本の免疫染色を行いSmurf2発現について評価した。さらに、Smurf2の発現と臨床病理学的因子や予後との関係を解析し検討した。また、転移再発なし群(n=60)の大腸癌も免疫染色を行い、転移再発あり群とSmurf2発現を比較した。Smurf2は大腸癌原発巣において低発現、肝転移巣においては高発現が有意に多かった。また、転移再発なし大腸癌は転移再発あり大腸癌と比較して有意にSmurf2高発現が多かった。さらに、肝転移巣におけるSmurf2高発現群は低発現群と比較して有意に肝切除後の予後が良好であった。これらの結果から、Smurf2 はtumor suppressiveに働いていることが推定された。上皮-間葉移行(Epithelial-Mesenchymal-Transition:EMT)との関与を検討すべくWestern blotにてEMTマーカー(E-cadherin, Vimentin)との関係を検証したが、有意な結果は得られなかった。 2020年度は、大腸癌原発巣の細胞株であるDLD-1を用いて、増殖能、遊走能、浸潤能について検証した。Smurf 2をSiRNAを用いてノックダウンしcontrol群と比較した。Proliferation assay, Invasion assayではcontrol vs si Smurf 2で有意差を認めなかった。一方、Migration assayにおいては、Smurf 2ノックダウン細胞株で有意に遊走能が増大した。昨年度の結果と合わせると、大腸癌ではSmurf 2の発現により細胞の遊走能が抑制され、転移抑制的に働き予後良好に寄与するのではないかと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は臨床検体を用いた検討を行い、Smurf2が腫瘍に対して抑制的に働く可能性が示唆され、この結果に基づいて2020年度はin vitroでの実験に移行した。細胞遊走能において臨床データと合致する結果が得られており、おおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は大腸癌の転移リンパ節から樹立された細胞株であるSW620を用いてDLD-1と同様の実験を行い、2020年度に得られた結果の検証を行う。 また昨今、癌の転移再発と幹細胞性(Stemness)に関する報告が散見されるがSmurf 2とStemnessに関する報告は少ない。これまでの結果からStemnessと関係している可能性も示唆されるため、2021年度からの実験計画に加えていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルスの影響で実験材料や資源の購入が滞った時期があり、予定通り購入できなかった物品があった。また、学会もWeb開催となり、旅費も発生しなかったため予定の使用額に達しなかった。次年度に繰り越し、必要物品の購入、また論文作成、投稿にともなう諸経費に使用する予定である。
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