2019 Fiscal Year Research-status Report
高度脂肪肝再生過程で生じる広汎細胞死の発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K09192
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
稲葉 有香 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (20571970)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NAFLD / 細胞ストレス / 肝再生 / 肝細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度脂肪肝における肝再生障害は、肝切除術後の合併症の誘因となっている。肝再生過程の細胞死の増加が、肝再生障害を引き起こす。高度脂肪肝の切除後再生過程には、孤発性細胞死と広汎細胞死(壊死)が誘導される。代表者は、広汎細胞死の抑制により、高度脂肪肝での肝再生障害が軽減することを見出している。このことは、広汎細胞死の発症が、再生障害の誘因として重要であることを示している。しかし、脂肪肝再生過程での広汎細胞死の発症機序・治療法は明らかではない。代表者は、高度脂肪肝再生過程における広汎細胞死の発症に、ストレス誘導性転写因子ATF3が関与する可能性を見出している。そこで、本研究は、高度脂肪肝再生過程で生じる広汎細胞死の発症メカニズムを解明することを目的とした。具体的には、1)広汎細胞死誘導におけるATF3の役割の解明、2)ATF3作用阻害による広汎細胞死抑制法の探索、に取り組んだ。 小課題1) 「広汎細胞死誘導におけるATF3の役割の解明」に関して、肝臓ATF3ノックアウトマウス(L-AKO)を用いた検討を行った。すでに予備検討により、L-AKOでは、高度脂肪肝切除後の血漿ALT値の持続的な上昇が改善し、ネクロプトーシス誘導因子RIPK3の発現増強が阻害され、広汎細胞死が消失することを明らかにしている。本小課題では、L-AKOでの肝再生過程の肝細胞死において、肝組織解析から、アポトーシスとネクロプトーシスの判別を行い、ATF3がRIPK3依存性のネクロプトーシスに重要であることが明らかとなった。小課題2) 「ATF3作用阻害による広汎細胞死抑制法の探索」に関しては、脂肪肝再生過程の広汎細胞死の誘因となるネクロプトーシスの誘導条件の検討を行った。これまで初代培養肝細胞におけるネクロプトーシス誘導条件は、明らかではなかったが、今回、RIPK3のリン酸化を誘導する条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高度脂肪肝再生過程における広汎細胞死の発症に、ネクロプトーシスが重要であることを見出した。さらに、その分子メカニズムとして、高度脂肪肝で増加するストレス誘導性転写因子ATF3によるRIPK3の発現誘導が重要であることを明らかにした。また、初代培養肝細胞での細胞ストレスによるRIPK3誘導条件を見出した。現在までの進捗状況は、概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、高度脂肪肝再生過程の広汎細胞死の誘導には、ATF3を介したRIPK3の発現誘導によるネクロプトーシス促進が重要であることを見出した。RIPK3はリン酸化されることで活性化し、ネクロプトーシスを誘導する。そこで本年度は、ATF3によるRIPK3発現・活性化メカニズムの解明に取り組む。
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