2019 Fiscal Year Research-status Report
膵癌EMTに関するtumor-educated plateletsの応用可能性
Project/Area Number |
19K09194
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
服部 憲史 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70744051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
山田 豪 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (30467287)
園原 史訓 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (30745534)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵癌 / 血小板 / 網羅的解析 / EMT / リキッドバイオプシー / バイマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌の治療成績向上には、集学的治療が不可欠である。当教室ではこれまでに上皮間葉転換(EMT)が膵癌の浸潤・転移メカニズムにおいて重要な鍵となることを報告してきた。また、過去の豊富な臨床経験から、膵癌は「局所進展タイプ」と「遠隔転移タイプ」に二分されると考え、各々のタイプに応じた治療が求められることから、EMTを膵癌のタイプ別分類に利用することを着想した。膵癌は手術以外の組織採取が必ずしも容易ではなく、体液を用いたより侵襲の少ない検査が切望されている。近年、癌細胞との相互作用を有し、EMTにも関連するとされる血小板(tumor-educated platelets:TEP)が脚光を浴びている。血小板は血中に多量に含まれ、非侵襲的かつ理想的なリキッドバイオプシーとして有望である。本研究ではTEPに含まれる分子の網羅的解析を行い、膵癌のタイプ別分類に有用なTEP関連バイオマーカーを開発し、難治性膵癌に対する個別化集学的治療に貢献することを目的としている。現在までに以下の事柄を実施した。 1. 当科で膵疾患に対して手術予定となった患者から血小板を採取し、血小板ペレットの作成を行った。 2.血小板中のRNAを網羅的に解析するため、high-throughput RNA sequencingを行った。 まず4例のテストサンプルに対してAgilent 2100バイオアナライザ(Agilent, CA, USA)を用いたquality checkを行ったところ以下の表の通りであった。Quality checkの結果を基に、Nugen kitによるライブラリ調整を行った後、RNA-seqに用いた。 3.Quality checkを行った4例のテストサンプルに対してBGI社のDNBseqでmRNA-seqを行い、データを得た。さらに症例数を増やして現在シーケンス解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵疾患患者からの網羅的解析が事項可能な品質の採血採取、血小板ペレットに含有されるRNA分子の抽出を定型化するために想定よりも期間を要した。血小板中のmRNA網羅的解析のためにRNA-sequencingの手法を採用したが、比較的少量サンプルからの解析となるため、パイロット解析としてまず4例のRNA-sequencingを行うこととし、この結果を確認してからサンプルサイズを拡張することにしたため、当初の想定よりも進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
拡張したサンプルサイズのRNA-seqの結果を解析し、非侵襲的バイオマーカーとして有望なTEP関連RNAを定量RT-PCR法で検出する。検出可能なRNAについて膵癌の臨床病理学的因子との関係を解析し、再発転移様式や治療反応性を予測可能な新規の非侵襲的膵癌バイオマーカーとしての可能性を探索する。 有望なTEP関連RNAにつき、プラスミドベクターを用いた強制発現系を膵癌細胞株で作成する。細胞株で遺伝子発現の変化や増殖能・浸潤能の変化および、抗アポトーシス能の変化を検討し、当該RNAの影響を調べる。 有望なRNAについてはにつきターゲットとなる分子(micro RNAやそれらが影響を与える遺伝子)がもつ、膵癌発生や進展に関わる機能の同定を試みる。報告例や⑤の結果をもとに、標的分子の発現消失あるいは強制発現系を作成し、マイクロアレイを用いて標的分子(+)と(-)細胞間の遺伝子変化を比較する。さらに、ウエスタンブロットやfluorescence in situ hybridizationなどを用い、抽出された核酸が標的とするより下流の分子の同定を試み、その発現変化が膵癌の発症と関連があるか調査する。また、臨床検体の膵癌腫瘍部と非腫瘍部における標的遺伝子の変化を検討する。 得られた知見については、十分な考察を加えた上で社会に発信するための論文を作成する。
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Causes of Carryover |
前年度の実験で解析されたTEPに関する遺伝子について、膵癌細胞株を用いた実験を行う。そのため細胞培養に関する試薬・ガラス器具・プレートの費用が必要であり、培養された細胞を用いた遺伝子編集実験・機能解析のための試薬類・キット、および遺伝子発現・タンパク発現解析に用いる試薬の費用も必要である。前年度同様さらなる最新の関連研究情報を収集することに加え、これまでに得られた知見・成果を発表するための国内外学会参加費用が必要である。また、膵癌細胞株を用いた実験において、発現遺伝子解析のためのマイクロアレイ外注費を要する。
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