2020 Fiscal Year Research-status Report
分子署名に基づいた血中循環腫瘍細胞の細分類化と膵癌集学的治療の精密化への臨床応用
Project/Area Number |
19K09209
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
元井 冬彦 山形大学, 医学部, 教授 (30343057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 徹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30282122)
畠 達夫 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (30806237)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵癌 / 血中循環腫瘍細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、膵癌患者の末梢血から血中循環腫瘍細胞(CTC)を単離し、上皮系、間葉系マーカー発現に基づいてサブタイプ分類を行い、サブタイプ毎の分子署名(molecular signature)を明らかにすることである。 前年度の報告のごとく、メーカー事情によりCTC測定機器の安定した使用が困難である状況を鑑み、”切除を企図した膵癌の集学的治療にリキッドバイオプシーに基づいたプレシジョン医療を導入する”という本研究の最終目標にアプローチを続けるべく、時間的・空間的に異なる状況で採取された生体試料をCTCの代理試料と用いる研究に注力している。 生体試料中のセルフリー分画には腫瘍細胞のみならず非腫瘍細胞に由来する核酸、サイトカインなども混在しているが、セルフリー分画はCTCに比べて単離が比較的容易・簡便であること、CTC解析でしばしば問題となる細胞間の不均一性を考慮する必要がない、などいくつかの利点がある。セルフリー分画に含まれるバイオマーカーとして、より腫瘍特異的な環境を解析対象にするため、エクソソームに焦点を当てて研究を継続している。予備的検討の結果、血液および腹腔洗浄液のいずれからも高純度・高精度なエクソソームの単離が安定してできるようになり、現在は網羅的解析を行うためのサンプルの選定を臨床経過を照らし合わせつつ行っており、さらに既知のmiRNAマーカーについてはコンパニオン診断の有用性を検証するためにデジタルPCRを用いて発現解析を行っている。さらには、エクソソームDNAとセルフリーDNA中の腫瘍由来DNAの含有量を比較検討し、転移部位別、時期別にエクソソーム/セルフリー分画の比率の変動についても検討を加え、エクソソームに包含される腫瘍由来DNAの時間的・空間的変動を観察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メーカー事情によりCTC測定機器の安定した使用が困難である状況を鑑み、”切除を企図した膵癌の集学的治療にリキッドバイオプシーに基づいたプレシジョン医療を導入する”という本研究の最終目標にアプローチを続けるべく、時間的・空間的に異なる状況で採取された生体試料をCTCの代理試料と用いる研究に注力している。 生体試料として末梢血・腹腔洗浄液の採取を継続して行っており、これまで血液150サンプル、腹腔洗浄液100サンプルを採取した。 エクソソームの単離については、より高純度・高収量をなし得るべく、前年に引き続きさらに条件検討を行った。具体的には超遠心法とポリマー沈殿法を比較検討したところ、ポリマー沈殿法でより高純度、高収量のエクソソーム単離が可能であり、単離されたエクソソームはNTA(Nanoparticle tracking analysis)を用いた粒径、電子顕微鏡による観察、プロテインアレイによるエクソソームに特異的なタンパク質の発現、以上異なる三種類の方法で確認した。さらには、エクソソーム分画からmiRNAおよびDNAを抽出し、デジタルPCRで内部標準となりうるターゲットの増幅を確認しえた。DNAについては膵癌の90%以上で変異がみられるKRAS遺伝子に着目し、同一試料から得られたエクソソームDNA、およびセルフリーDNA中のKRAS遺伝子変異アレル頻度をデジタルPCRを用いて測定し、腫瘍由来DNA割合の多寡を比較検討した。セルフリーDNAの方がエクソソーム由来DNAに比べて核酸自体の収量はより多かったが、KRAS遺伝子変異アレル頻度はエクソソーム由来DNAの方がより高値であった。このことから、エクソソーム由来DNAは腫瘍由来DNAの含有率が高く、エクソソーム分画はセルフリー分画と比較してより腫瘍特異的な環境を反映しうる解析対象であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソソーム由来miRNAについては、miRNAアレイを用いて網羅的発現解析を行い、血中エクソソームからは血行性転移特異的なマーカー、腹腔洗浄液中のエクソソームからは腹膜転移特異的なマーカーの同定を試みる。アレイ解析から候補となるmiRNAマーカーを同定した後、デジタルPCRを用いて単位生体試料液中のmiRNAのコピー数を絶対定量する。さらに、生体試料が複数回採取された症例については、miRNAの発現と臨床経過および腫瘍マーカーを照らし合わせることで、治療効果判定・予測診断マーカーとしての有用性を評価する。 DNA解析については、デジタルPCRを用いてエクソソーム由来DNA中のKRAS遺伝子変異を標的としたスクリーニングを行った後、腫瘍由来DNAの含有割合が多いサンプルに対しては次世代シーケンスを行い、セルフリー分画とエクソソーム分画中の遺伝子変異プロファイルを比較検討する。さらに、同一症例から得られた血液と腹腔洗浄液を対象にペア解析を行い、遺伝子変異のプロファイルの相違と転移部位を多クローン性という点から比較することで、転移部位別特異的な遺伝子変異を明らかする。 エクソソーム分画を用いた遺伝子発現解析を行うべく、高純度・高濃度に単離されたエクソソーム分画からtotal RNAを抽出する。Bioanalyzerを用いたRNAの品質チェックに基づき、その後の網羅的解析のプラットフォームを決定する。当初はRNAシーケンスによるトランスクリプトーム解析を予定していたが、エクソソーム由来核酸を対象とするため、品質によってはマイクロアレイ解析も考慮する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、当該研究の成果発表及び研究内容に関する情報収拾目的で参加するために旅費を計上していたものの、開催される学術集会や研究会のほとんどがWEB開催あるいはハイブリッド開催となったため、旅費使用が本年度減少した。WEB開催された学術集会でも成果発表は可能であり、情報収拾も一定程度可能であったが、次年度は最終年度に当たることもあり、本年度参加困難であった学術集会も含め、当初計画より多く旅費を使用する予定である。 また、メーカー事情で一部の測定系が使用できずに物品費が予定額を下回った。計画を次年度に繰り越す形で次年度使用額を増額し、計画を遂行したいと考えている。
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[Journal Article] Serum Anti-p53 Antibody Can Serve as a Predictive Marker for Histological Grade of Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms of the Pancreas.2020
Author(s)
Hata T, Mizuma M, Motoi F, Iseki M, Omori Y, Hayashi H, Nakagawa K, Morikawa T, Kamei T, Naitoh T, Furukawa T, Unno M.
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Journal Title
Pancreas.
Volume: 49
Pages: 768-773
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Prognostic impact of intraoperative peritoneal cytology after neoadjuvant therapy for potentially resectable pancreatic cancer.2020
Author(s)
Aoki S, Mizuma M, Hayashi H, Yoshimachi S, Hata T, Miura T, Takadate T, Maeda S, Ariake K, Kawaguchi K, Masuda K, Ishida M, Ohtsuka H, Nakagawa K, Morikawa T, Motoi F, Unno M.
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Journal Title
Pancreatology.
Volume: 20
Pages: 1711-1717
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] GNAS mutation detection in circulating cell-free DNA is a specific predictor for intraductal papillary mucinous neoplasms of the pancreas, especially for intestinal subtype.2020
Author(s)
Hata T, Mizuma M, Motoi F, Omori Y, Ishida M, Nakagawa K, Hayashi H, Morikawa T, Kamei T, Furukawa T, Unno M.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 10
Pages: 17761
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 初診時切除不能膵癌に対する非手術療法奏効後切除の前向き観察研究:Prep042021
Author(s)
元井冬彦, 中森正二, 松本逸平, 里井壯平, 平野聡, 川畑康成, 庄雅之, 本田五郎, 木村康利, 岸和田昌之, 青笹季文, 岡野圭一, 北川裕久, 村上義昭, 海野倫明
Organizer
第51回日本膵臓学会大会
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