2019 Fiscal Year Research-status Report
Searching new immunotherapy for Crohn's disease by T cell inactivation using anal canal specimens
Project/Area Number |
19K09223
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
久下 博之 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30801774)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩佐 陽介 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (30812317)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | クローン病 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:厚生労働省指定難治性炎症性腸管障害クローン病(CD)に対して実験的検証によるCD肛門病変特異的な免疫学的動態探求とクローン病肛門病変特異的かつ独創的新規治療法開発を目指すことでCD患者QOLをさらに向上させることを主目的とする. 意義:肛門局所におけるT細胞系免疫学的動態についての研究報告は認めない.臨床的に,肛門病変の病勢コントロールが全身症状安定に繋がることから有効に作用する可能性が高くCD治療進展に寄与できると見込んでいる.CD肛門病変検体を検索することによる新規治療法確立の可能性がある. 重要性:PD-1抗体薬を全身投与によるT細胞系賦活化が,今までにない腸炎合併症副作用を発生させている現象にもCD病発生原因追及のブレークスルーが存在するのではないかという考えが本研究の根本的な学術的問いとなっている.成果がでれば国内のみならず国外でもインパクトのある研究となると確信している. 2019-2020年度計画:CD肛門上皮組織中の自然免疫および獲得機構の解析 肛門病変生検検体,腸管切除手術症例については手術検体を用いて組織学的検討を行う.免疫組織染色により,浸潤T細胞(CD4, CD8, CD34, CD25),NK細胞,DC,マクロファージ等免疫担当細胞の浸潤程度と組織学的障害度を比較検討する.CD病診断基準である非乾酪性類上皮性肉芽腫細胞陽性率を検討する.正常腸管とクローン病腸管切除検体を用いて肛門病変との相違点を対比検討する.従前と異なる新規T細胞不活化分子を選別できる可能性がある.肛門上皮と小腸大腸腸管上皮におけるT細胞系negative pathway免疫機構の相違点の詳細を明らかとし,肛門病変特異的新規治療開発に繋がる標的タンパク探索を最終目的とする.初年度はクローン病発症頻度,肛門手術件数を勘案して10例の検体採取,条件設定を計画している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度において進捗状況はかなり遅れていると考えている.その理由として,クローン病(CD)病患者肛門病変増悪による肛門周囲膿瘍手術(seton drainage法)を年間10例から20例と見込んでいたが,本年度はCD病手術症例は5例と見込みより少数であったこと,またいずれも小腸瘻孔狭窄形成症例,CD病関連発癌手術症例であり腰椎麻酔下での肛門検体採取に至ることが出来なかったことが挙げられる.レミケードなどの生物学的製剤による肛門病変病勢制御率が高くなり肛門疾患専門病院におけるCD肛門病変手術症例は減少傾向にあることも理由として挙げられる.手術症例のCD病変部と非CD病変部のHE染色作成,各種染色用無染プレパラート作成,凍結標本保存は継続している.炎症性腸疾患(IBD)類縁疾患である潰瘍性大腸炎(UC)手術症例についてもT細胞系免疫応答タンパクやサイトカイン解析のための免疫染色,RT-PCR用検体採取を継続して症例数を増やす努力を行っている.実験系についてはpreliminaryなデータ解析開始目標とする.CD臨床データベース作成も並行して行っており実験データと臨床学的重症度(IOIBD, CDAI)や臨床病理情報対比が迅速に行える準備している.炎症性腸疾患学会,大腸癌研究会,厚生労働省炎症性腸疾患会議臨床試験に参加しており,回腸嚢炎関連問題,新規生物学的製剤効果やCD病関連発癌症例について学会発表を定期的に行っている.現在においても炎症性腸疾患や大腸癌を対象とした大腸肛門骨盤外科医として臨床業務に従事継続しており,炎症性腸疾患CD病患者を当院で約80名定期診療している.若年発症が多い炎症性腸疾患を診療する医師として豊富な臨床経験を通じて本疾患新規治療開発意欲と基礎研究実績を併せて患者に福音をもたらしたい根源的欲求は申請時と何ら変化なく強く,本研究を前進させることに注力する.
|
Strategy for Future Research Activity |
本邦において炎症性腸疾患(IBD)診療を行っている病院は集約化されつつあり,クローン病(CD)についてはその傾向が強くCD研究を行える施設は限られる.IBDを外科医が定期診察することが少ない状況であるが,当施設ではIBD内科的治療から外科的治療まで一貫して診療している希な特徴を有する施設である.臨床現場では肛門病変については内科医の診療が困難であり,検体採取するとなれば大腸肛門外科医の役割となる.肛門上皮検体を用いた免疫学的研究報告については報告がなく,我々が計画する研究は独創的であることに現時点でも変わりはない.この利点を生かして本研究該当症例に至適なタイミングで介入する機会を引き続き模索する.肛門病変検体でなくともIBD手術検体採取を継続して保管する.加えて通常の痔瘻患者の肛門上皮検体をコントロールとして採取,その検体を用いて免疫染色,RT-PCR,サイトカイン測定する実験系を確立させておくことを継続させ本実験の準備する.CD臨床病理データについても定期的に蓄積・保管持続し,各種研究会や学会発表を定期的に行う. 若年者の人生選択に強く影響をもたらす可能性がある難治性炎症性腸疾患を診療する医師としてCD病新規免疫治療開発意欲と基礎研究実績を併せて患者に福音をもたらしたい根源的欲求は何ら変化なく強い.繰り返すCD肛門病変による狭窄や括約筋機能低下による肛門機能廃絶のため永久人工肛門となる状況を回避させたい.肛門病変を用いたCD新規研究手法を確立できれば手術や消化管内視鏡などの患者への侵襲的検査手法を用いずとも簡便なバイオマーカー同定手法確立という副次的波及効果が期待できる点も創造性発展性があると考える.さらに腸管上皮検体との対比を行う点は斬新かつ独創的と信じている.日常臨床業務を通じて本研究の結果創出努力を継続し,国内外におけるCD病治療法のブレークスルーを世に示したい.
|