2019 Fiscal Year Research-status Report
Circulating tumor DNA検査の臨床導入における課題点の克服
Project/Area Number |
19K09224
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
遠藤 史隆 岩手医科大学, 医学部, 助教 (70714442)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 有史 岩手医科大学, 医学部, 講師 (10405798)
西塚 哲 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 特任教授 (50453311)
岩谷 岳 岩手医科大学, 医学部, 特任准教授 (70405801)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ctDNA / Liquid biopsy / 食道癌 / 胃癌 / digital PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍細胞より血中に遊離したDNA (Circulating tumor DNA: ctDNA)は症例特異的バイオマーカーとして期待されているが、癌の種類や再発形式によるctDNAの陽性率の違いや、最適な解析のタイミング、陽性の判定基準など臨床検査としての妥当性・有用性は確定されていない。先行研究でctDNA高陽性率の食道癌、低陽性率の胃癌を対象とし、ctDNAモニタリングの臨床導入における課題点を明らかにすることが研究の目的である。特にStage I症例、治療前ctDNA陰性進行癌、再発・再増大時のctDNA陰性維持例、腹膜播種症例など、ctDNA陰性例に焦点をあて、癌の状態により異なるctDNA放出のメカニズムを解明したい。先行研究で構築した「原発巣変異スクリーニングより検出された症例特異的変異のdigital PCRを用いたctDNAモニタリング」システムをベースとし、原発巣複数ヵ所サンプリング、変異解析対象遺伝子の改変、タンパク発現解析、転移再発組織の解析を加える。本研究では隣接臓器であるが、組織型、進展再発形式、治療法の大きく異なる食道癌、胃癌を対象にctDNAによる病勢モニタリングの臨床導入における課題点を明らかにしプロトコールの確立をめざしている。また学術的独自性として、これまでの多数症例の長期間におよぶ頻回なctDNA解析のデータから得られたnegativeな所見に焦点をあて、癌の状態により異なるctDNA放出のメカニズムを解明する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道癌、胃癌症例は順調に集積されている。これまでにctDNA解析まで行っている症例からの検討では、食道癌ではctDNAモニタリングでは既存のCT画像診断に比較して、1)数か月先行し再発・再増大を予測可能であること、2)非特異的画像所見によらず腫瘍細胞量を評価できることから正確な化学・放射線療法の効果判定が可能であること、3)治療後のctDNAの持続陰性化により無再発状態の確認が可能であることが示唆されている。先行研究と同様Sate I症例は、input DNAやPCR cycleの増加を試みているがctDNA検出率の増加は認めていない。早期がん症例のctDNA検出率を上げるためには、採血増量によるサンプルDNAの増量、反応デジタルPCRチップ数の増加、さらなる解析技術の工夫が必要であるが、絶対的に微量なDNA量の検出はエラーも多いため、その正確性を検証するシステムも十分に必要となる。日常臨床におけるコストや検査時間 (turnaround time)を考慮すると、採血検査回数を増やす方が実臨床には適していると考えている。胃癌の複数個所サンプリングからの変異解析では、全部位で共通する変異は非共通変異に比較して原発巣における変異アリル頻度およびctDNA陽性率が高く、サンプル採取部位を増やしてもctDNA陽性率を改善できないものと考えられた。胃癌ではctDNA陽性率は30-40%と食道癌に比し低率である。日本人胃癌で変異頻度の高い遺伝子を標的とした遺伝子パネルをデザイン中である。胃癌のctDNA陽性率が低い原因として、スキルス胃癌のように間質性分の増生が強く、腫瘍細胞数自体は少ない組織学的特徴や腹膜播種のような血中に断片化したctDNAが放出されにくい転移・再発形式を考えている。スキルス癌症例、腹膜播種症例の症例数増加を進めているが、適格症例が多くはない点も問題点となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
解析症例のうち腫瘍体積の小さい食道表在癌症例で手術後に長径15mmの胸壁転移を生じた症例を経験した。本症例の原発巣で検出された症例特異的変異でctDNAモニタリングでは、術前および術後長期間ctDNA陰性を維持していたが、画像で転移検出される4か月前より症例特異的ctDNAの増加が見られた。本例と同様、腫瘍細胞量としては治療前病変の方が転移再発病変にもかかわらずctDNAは微小転移病巣が高い症例が多いことから、再発のような増大傾向の早い病変(細胞分裂スピードの速い病変)はctDNA陽性率が高く、細胞分裂の遅い早期癌の検出率を上げることよりも、検査システムを簡略化し頻回なモニタリングを可能とすることが癌診療では重要と考えられる。したがってStage II以上の進行癌に重点を置き解析を進めている。スキルス胃癌や腹膜播種症例などの集積状態が悪いこと、また臓器・がんの種類によりどのような病態がctDNA検出率に影響を与えるかを広く検証するため、食道癌・胃癌に限らず本学内で診療にあたる全悪性腫瘍を対象にctDNAモニタリングを行う研究を並行して開始した。間質増生の多い癌症例や腹膜播種・胸膜播種症例などの集積増加により研究進捗が期待されるほか、脳や精巣などctDNAが検出されにくいとされる臓器における原発・転移腫瘍からのctDNA放出状況の確認も本研究領域における新たな知見を見出すものと考えられる。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、digital PCRのProbe/primer作成に関して、複数キットでの申し込みで購入費がセット価格となり安くなることから、セット価格になるまで貯めている症例があるため令和元年度予定使用額より下回った。 令和二年度については、元年度と同様にNGS解析、Probe/primerのデザイン・合成、digital PCR、CELL-FREE DNA BCT採血管、において使用していく予定である。
|
Research Products
(2 results)