2019 Fiscal Year Research-status Report
メイズ手術前後の左房形態及び左房機能とその経時的推移:MRIを用いた評価法の確立
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19K09263
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
石田 成吏洋 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (90397331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 潔 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40305579)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メイズ手術 / 左房機能 / MRI / 心房細動 |
Outline of Annual Research Achievements |
心房細動に対するメイズ手術では心機能改善と血栓形成回避を目的とするが、術後に左房機能低下や血栓形成を認める事がある。しかし、メイズ手術前後の左房の経時的変化を追跡した報告は少なく、メイズ術後の左房機能低下と血栓塞栓症発症の病因は未だ解明されていない。また、メイズ手術後の抗凝固療法は何も指針が示されていない。心臓MRI検査を用いて左房機能の推移や血栓形成のメカニズムを解明することで、①メイズ手術後の抗凝固療法に関する新たな指標、②心房機能の保たれている一過性心房細動に対するメイズ手術適応基準の新たな指標、③心房機能を低下させないメイズ手術の術式を開発するための新たな知見、の三つを提供する事が本研究の目的である。 目標①;メイズ手術前後に心臓MRIを用いて左房機能(容積・駆出率・僧帽弁通過血流速度など)を計測する。術前、術後1か月、術後6か月、術後1年における経時的変化を観察する。動画MRI撮影法で各左房周期の左房内腔をトレースして左房容積を計測し、受動的、能動的左房駆出率を算出する。僧帽弁通過血流速度を計測し、左房容積を算出する。左房内での3次元的血流情報を把握し、流体力学を用いた左房内渦流分布を評価する。3D経食道心エコー、3D造影CTと心臓MRIの測定値を比較し、心臓MRIの精度性を検証する。目標②;目標①のデータを解析し、メイズ手術後の左房機能、左房内血流の推移を明らかにする。また、それら推移と集積した患者データを分析し、術後の合併症イベント、心機能回復や血栓症と左房機能との関連因子を検索する。 これらの結果を踏まえ、メイズ手術後の抗凝固療法や、一過性心房細動に対するメイズ手術の適応基準に関する新たな指標、心房機能を低下させないメイズ手術の術式を開発するための新たな知見を考案する予定である。まずはコントロールとしてメイズ手術以外の心臓手術において左房計測を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では研究期間の3年間で対象症例を総計30例とし、追跡期間は術前から術後1年までで、術前、術後1か月、術後6か月、術後1年にいて心臓MRI検査方法で左房機能計測とその経時的変化を観察して患者データの集積を行い、メイズ手術前後の左房機能、左房内血流を評価する予定としている。当科では例年10例強程度の心房細動に対するメイズ手術を実施しているが、研究初年度の令和元年度においては心臓手術実施総件数は例年と変わりないにもかかわらず、原因は現段階で不明なもののメイズ手術の適応となる心房細動合併症例が無かった。そのためメイズ手術自体を実施することができず、本研究の対象となるデータ収集ができなかった。そこで、まずはコントロールとしてメイズ手術以外の心臓手術2例(大動脈弁狭窄症、収縮性心膜炎)において、左房計測を行った。左房拡張末期容積、左房収縮末期容積、左房一回拍出量、左房駆出率を計測した。2例とも心周期における左房容積の経時的変化としては二峰性であることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
実臨床においては、開心術症例は基本的に循環器内科で加療や経過観察されている症例が手術適応を満たしている場合、あるいは満たす病態に至った場合に心臓外科に紹介となり、手術が実施されるのが通例である。当院でも同様の治療戦略のもと、心疾患の治療が行われている。すなわち心房細動に対するメイズ手術症例を確保するためには当院及び関連・紹介施設の循環器内科医との間で心房細動治療におけるメイズ手術の適応及び有効性を再度確認して共有し、早期診断、確実・適切な外科的治療介入を心がけることで本研究対象症例の獲得に努める。
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Causes of Carryover |
“7.現在までの進捗状況”の項でも述べたように、令和元年度は対象症例がなく、それに伴いデータ解析関連の支出がなかった。令和2年度には“8.今後の研究の推進方策”でも述べた方策などにより目標症例数を超える実施を目標とし、それに伴い関連支出も当初の予定と比較して増額となる見込みである。
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