2020 Fiscal Year Research-status Report
転移の鍵をにぎるSPP1遺伝子発現制御機構の解明とその応用
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19K09287
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小阪 美津子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50270476)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 転写調節因子 / SPP1 / がん進展 / 細胞移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
SPP1はがん進展に深く関わることが以前から報告されてきたが、どのように悪性化に働くのかについてはよくわかっておらず、特に癌細胞が産生するSPP1については知見がほとんどない。我々は癌細胞がSPP1産生を開始するしくみついて明らかにしようとした。SPP1遺伝子の上流約10kbの範囲から発現制御に関わる領域の同定を行うため、上流から約2kb程度欠損させた領域を各々レポーター遺伝子(EGFP)をつないだコンストラクトを20種以上作成した。SPP1発現、非発現培養癌細胞を用いて、レポーター遺伝子を導入し、蛍光の有無を観察することで、内在の発現をミミックするのに十分と考えられる制御領域の同定に初めて成功した。この成果は、学術的、技術的にも新規性の高い成果と考えている。 さらに、癌細胞におけるSPP1発現制御のkey moleculeとして、我々が以前から着目してきた転写調節因子はOCT4であることを見つけた。各種癌細胞および肺腺癌腫瘍検体でのSPP1およびOCT4遺伝子の転写産物の解析を行ったところ、OCT4AとSPP1Cの2つの分子軸が癌細胞の悪性度と密接に相関することを確認した。この成果の一部は国際雑誌に発表し、さらに予後追跡など調査中である。ここの癌組織におけるこの2つの分子の発現を調べることで、がんの予後診断や悪性化予防、個別化医療の実現に発展する可能性が期待できる。 さらに、このレポーター遺伝子を導入してSPP1発現癌細胞を可視化し、タイムラプス顕微鏡にてその挙動を追跡したところ、興味深い細胞移動の様子が観察された。これらのSPP1陽性癌細胞がもつ特殊な性質は、悪性進展、特にがん転移のしくみを明らかにする上で役立つと考えられ、その分子基盤解明に向けた準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
SPP1を発現する癌細胞が集団の一部であること、それらの細胞は周囲の細胞と比べて移動能が高いことが観察されており、癌細胞の不均一性や悪性進展を理解する上で極めて重要な知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
癌進展に深く関わるSPP1の発現制御に関してこれまでほとんど解明されていなかったが、本研究により、その発現増強に関わる転写調節因子候補を見つけ、その因子とSPP1の共発現が癌進展に深く関与することが判明した。これらの分子軸を発現する癌細胞を可視化するためのレポーター遺伝子を新規開発し、集団内での細胞の動きを追跡しその挙動を明らかにする。同時にその細胞群の分子基盤を明らかにすることにより、がんの悪性進展の早期診断、予防法創出に向けた知見を収集する。
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Causes of Carryover |
前倒し支払い請求により30万円を当該年度に使用予定としてうち、約7万円の残額が生じた。理由は年度内に納品できなかったプラスチック製品類の計上分にあたる。これは次年度に消耗品費(プラスチック製品類)として使用する。
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Research Products
(2 results)