2020 Fiscal Year Research-status Report
悪性胸膜中皮腫に対するNK細胞に関連した免疫調節分子の発現制御療法の開発
Project/Area Number |
19K09298
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Research Institution | National Hospital Organization,Yamaguchi - Ube Medical Center |
Principal Investigator |
沖田 理貴 独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター(臨床研究部), その他部局等, 呼吸器外科医長 (90467762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 昌男 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30368641)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / 免疫チェックポイント / NK細胞 / PD-L1 / NKG2Dリガンド |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、非小細胞肺癌と悪性胸膜中皮腫を対象に、腫瘍細胞の免疫逃避機構を解明することでより有効な新規癌免疫療法の開発につながると考え、本研究に従事している。 昨年度は、数年来取り組んできた、細胞内シグナル制御による免疫逃避機構の克服について、研究成果を英文原著論文として発表することができた。具体的には、肺癌細胞株におけるIFNγ刺激によるPD-L1発現機構にJAK-STATシグナルが関与することから、抗リウマチ薬としてすでに臨床応用されているJAK阻害剤Tofacitinibを利用し、肺癌細胞においてIFNγ刺激によるPD-L1発現増強は免疫逃避に関与するが、tofacitinibによりIFNγによるPD-L1発現誘導を阻害することで、NK細胞からの免疫逃避を克服できることをin vitro実験系で示した(Okita R, et al. Thorac Cancer 2021)。 さらに、当院は悪性胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘術施行件数が全国でも有数とされることから、該当症例の組織標本を用いて、免疫組織化学反応法によりHLA class IとPD-L1の発現について評価した。当科での手術症例において、HLA class IとPD-L1それぞれの発現状況と予後との間には関連性を認めなかったが、PD-L1とHLA class Iそれぞれの発現量は逆相関することを見出した。本研究結果は令和3年度に学会発表予定である。さらにNK細胞活性化リガンドであるMICA/B、ULBPについても免疫染色を終えており、現在統計学的解析を行っている。引き続き、悪性胸膜中皮腫の臨床検体を用いた免疫染色について対象分子を増やすとともに、胸水中の免疫チェックポイント分子の測定や腫瘍細胞株を用いたin vitro実験系を用いた免疫逃避機構解明についても研究計画を進展させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
悪性胸膜中皮腫臨床検体を用いた免疫組織化学反応法を用いた免疫関連分子の発現解析はようやく軌道にのり、これまでにHLA class I、PD-L1、MICA/B、ULBP-1,-2,-3,-4について解析済みであり、単項目での臨床病理学的因子との関連のみならず、multi-immunoparameterを用いた予後予測因子の探索を開始できる状況となった。さらに免疫組織化学反応法による発現評価の対象項目を他の免疫チェックポイントにも拡げていく必要性を感じているが、おおむね順調に進捗している。 一方、腫瘍細胞株を用いたin vitro実験系については所属施設のフローサイトメーターが度重なる故障のため機能せず、引き続きin vitro実験に支障をきたした。今年度、ようやくフローサイトメーターを新規購入することが決まり、腫瘍細胞株を用いたin vitro実験の再開が可能となる。 以上、コロナ渦のみならず、実験機器の問題もあり、細胞株を用いたin vitro実験が進まなかったため、研究はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体を用いた免疫組織化学反応法では、腫瘍に浸潤するCD8 T cell、NK cellなどの免疫細胞や新規免疫チェックポイント分子(VISTAなど)も測定項目に加え、複数分子の発現状況についてクラスター分類を行い、malti parameterを用いた各クラスター毎の予後予測因子の解析を行うことで新たな知見を得たい。 また、患者胸水検体中のPD-L1などの免疫チェックポイント分子の濃度測定を行い、胸水中の標的分子濃度単独での予後予測因子としての役割のみならず、組織標本での免疫チェックポイント分子の発現との相関についても検討を予定している。 さらに、新規に購入するフローサイトメーターで、腫瘍細胞株を用いたin vitro実験により、各種細胞内シグナルの活性化や不活化がPD-L1や他の免疫チェックポイント分子、免疫関連分子の発現にあたる影響を解析するとともに、標的分子の発現制御機構についても解析を行うことで、悪性胸膜中皮腫患者における抗腫瘍免疫減弱の要因とその克服について、新規免疫療法開発のシーズとなる知見を見出し、世界に発信する。
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Causes of Carryover |
組織検体を用いた免疫組織化学反応法による各種免疫チェックポイント分子の発現解析は順調に進捗している一方、細胞株を用いたin vitro実験についてはフローサイトメーターの故障が続き、in vitor実験で用いる消耗品や試薬の購入がなく、物品費が計画よりも少なくなった。これについては、ようやく新規フローサイトメーターの購入が決定し、今後、遅れを取り戻すべく、細胞培養やフローサイトメトリー用の試薬購入のための次年度使用額としてあてたい。 また、コロナ渦で学会がすべてWeb開催となっており、出張旅費についても計画より大幅に使用額が少なかった。これについては、本年度も現地開催となるかどうか不明だが、国外のweb開催学会にも積極的に参加する良いチャンスであり、学会参加費として次年度使用額にあてる予定である。
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Remarks |
研究成果については、研究代表者の所属施設において掲示し、国民にむけて発信している。
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Research Products
(4 results)