2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of rejection control method by mesenchymal stem cells using original rat lung transplantation model
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19K09309
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
宮崎 拓郎 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (00584749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土肥 良一郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00817786)
土谷 智史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30437884)
渡邉 洋之助 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30457551)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
畑地 豪 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (80437889)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 呼吸器外科学 / 脂肪幹細胞 / 拒絶反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
移植治療における間葉系幹細胞の免疫抑制効果は、動物実験で肝臓や腎臓等の臓器では間葉系幹細胞投与により持続的な免疫抑制効果を示し、免疫抑制剤の減量や、免疫寛容状態も確立している(Kuo, et al. Plastic Reconst. Surg 2014)。しかし、肺移植領域では動物実験においても間葉系幹細胞の免疫抑制効果の検討は遅れており、幹細胞治療の最適なプロトコールの確立はまだ不十分である。有効な幹細胞治療が確立されれば、肺移植後の拒絶反応の軽減と生存率の上昇、また長期的な免疫抑制剤による副作用を軽減でき、移植患者のQOLの改善に寄与する。 動物実験において当科で独自に開発したラット肺移植-幹細胞投与モデルを使用し、肺移植後に免疫抑制剤とレシピエント由来の脂肪幹細胞を経静脈的に投与する群と、免疫抑制剤のみを投与する群の拒絶反応を比較したところ、脂肪幹細胞投与群において、組織学的に拒絶反応の軽減を認めた。脂肪幹細胞投与群において、血中のHGF、IL-10等の抗炎症性サイトカインの上昇や、移植肺リンパ組織内でのc-Met(HGFレセプター)の高発現を認めた。これらの実験において、肺移植モデルにおいても同様に間葉系幹細胞投与によって免疫抑制効果を認め、拒絶反応が軽減できることが分かった。 まずは幹細胞治療において最適な幹細胞ソースを見つけるため、レシピエント由来脂肪幹細胞、ドナー由来脂肪幹細胞、他科由来脂肪幹細胞の免疫抑制効果を比較し、最適な幹細胞ソースを決定する。また肺移植における最適な幹細胞の投与タイミングを見つけるため、投与タイミングの違いによる免疫抑制効果を検証し、最適な投与タイミングを決定し、より効果的な独自の治療プロトコールを決定する。それプロトコールを踏まえて、長期生存モデルを作製し、慢性拒絶の抑制について検討していき、免疫寛容の誘導が可能かどうかを検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラット肺移植-幹細胞投与モデルを使用して、肺移植直後にレシピエント由来脂肪幹細胞、ドナー由来脂肪幹細胞、他家由来脂肪幹細胞の免疫抑制効果を比較した。免疫抑制剤単独群に比較し、レシピエント及びドナー由来の脂肪幹細胞投与した群では、拒絶反応の軽減および、血中の抗炎症系サイトカインの上昇を認め、移植肺組織内でのTreg細胞の増加を認めた。しかし、レシピエント由来かドナー由来かの脂肪幹細胞で免疫抑制効果に明らかな有意な差は認めなかったので、免疫抑制効果の強い傾向がみられたレシピエント由来の脂肪幹細胞を幹細胞ソースとして採用する方針とした。 次に投与のタイミングの違いの検証に関して、臨床的応用の面も考慮し、移植前日にレシピエント由来脂肪幹細胞投与する群と、移植直後にレシピエント由来脂肪幹細胞投与する群とにおいて、免疫抑制効果の比較を行う実験を実施した。各群の実験モデルを揃えてまず組織学的評価を行ったところ、腎移植や肝移植等とは異なり、移植直後に脂肪幹細胞を投与した群の方か拒絶反応の軽減を認め、組織学的な拒絶スコアでも移植後投与群が低い傾向を示した。今後投与タイミングに違いによる免疫抑制効果に関してさらなる検討を追加していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
治療タイミングの違いにより、免疫抑制効果に違いが生じる理由として、投与された脂肪幹細胞のラット体内における局在の違いに注目している。頚静脈より脂肪幹細胞を投与しており、まずは肺に取り込まれ、その後全身に分布すると想定される。この脂肪幹細胞の体内での局在の違いによって、免疫抑制効果の違いが生じているのではないかと考え、脂肪幹細胞投与後の体内分布を量子ドットで蛍光標識した脂肪幹細胞を用いてIVISイメージングでリアルタイムに測定する実験を計画している。また、ELISA法にて血中の炎症性及び抗炎症性サイトカイン値の測定を行い、拒絶反応の強弱とサイトカイン値の違いについて検証する。またラット脾臓細胞におけるCD4細胞中のTreg細胞の割合をフローサイトメトリーで測定し、Treg細胞の違いによる拒絶反応の強弱について検証する。脂肪幹細胞は腎移植領域では、投与されたに最適な幹細胞治療のプロトコールを確立するために、長期生存モデルも用いた実験に先立ち、投与タイミングより比較を行う方針とした。 最適な幹細胞ソースと、投与タイミングを踏まえて幹細胞治療のプロトコールを確立し、長期生存モデルにおける慢性拒絶についても検証する予定としている。ドナー特異的抗体の産生量の違いや、制御性B細胞(Breg)の違いに着目し、長期モデルのおける脂肪幹細胞のB細胞系への関与についても今後検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、動物実験の一時中断等もあり、投与タイミングについての実験においての各群のモデル作製を中心的に行っていたため、ELISAやフローサイトメトリー、免疫染色等の実験を令和3年度に繰り越す形となった。令和2年度で予定していた上記の実験を実施していく予定としている。また物品費が当初の予定よりも安く購入することができたので、残額が生じた、令和3年度に物品費として使用する予定である。
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