2021 Fiscal Year Annual Research Report
肥満による術後急性期疼痛の重症化機序と制御に関する研究
Project/Area Number |
19K09321
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
穂積 淳 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (70824192)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 博昭 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70822815)
住谷 昌彦 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80420420)
東 賢志 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (80522292)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 肥満 / メタボリック症候群 / 術後痛 / サイトカイン / レジスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満人口は増加の一途を辿り、肥満は生活習慣病の誘因となるだけでなく、周術期合併症の重要なリスク因子となることが知られている。我々は疼痛医学を専門とする麻酔科医として周術期管理の観点から肥満と術後痛の関連性に着目し、メタボリック症候群関連サイトカインのレジスチンの手術直前の血清濃度と遺伝子多型が術後痛と関連していることを世界で初めて明らかにしたが、肥満が術後痛を重症化させる機序は今なお解明されていない。今回の研究申請では、レジスチンを基軸として、メタボリック症候群関連サイトカイン血中濃度とともに炎症マーカーの手術後時間的推移と術後痛との関連性を調査し、肥満による術後創部痛の重症化ネットワークを解明することを目的とした。開腹手術後患者を対象に、レジスチン、TNF-α、IL-6、レプチン、アディポネクチンの血中濃度を計測した。レジスチンが術後痛と有意に相関し、その他サイトカインは術後痛とは相関しなかった。また、レジスチンとIL-6、TNF-α、レプチンとは高い相関を示した。アディポネクチンはレジスチンとは相関しなかったがレプチンと逆相関した。さらに、各サイトカインの相互作用を踏まえたネットワークをモデル化して解明することを目的にパス解析を実施し、最も良いモデルではIL-6とTNF-αが上流に位置付けられた。続いて、この2者がレプチン血中濃度の増加に影響を及ぼすものの術後痛にはレプチンは関連しなかった。レプチンと同レベルでレジスチンが位置付けられたが、レジスチンにはIL-6のみがその血中濃度の増加に影響を及ぼし、レジスチン血中濃度上昇が術後痛の重症度に影響するモデルが得られた。また、一つのサイトカインは術後せん妄に関連することも併せて明らかになった。術後痛の重症度予防に向け、炎症および抗炎症サイトカインのうち特にメタボリック症候群に関連するものが新規鎮痛薬の標的となる可能性がある。
|