2021 Fiscal Year Research-status Report
麻酔薬により脳内の概日時計複合体はどのように攪乱され、修正されるのか
Project/Area Number |
19K09335
|
Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
飯島 典生 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (00285248)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 俊幸 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (20360208)
山口 剛史 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 助教 (50726510)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 吸入麻酔 / 概日リズム / Per2 / 視交叉上核 / 第四王室脈絡叢 / 側脳室脈絡叢 / 松果体 / sevoflurane |
Outline of Annual Research Achievements |
安全な全身麻酔技術に支えられることで外科手術は発展してきた。一方で麻酔により術後の一時的な鬱、せん妄なども報告されおり、麻酔による脳内の概日時計への影響が示唆されてきた。マウス・ラットに吸入麻酔薬sevoflurane処置を行うと(in vivo application)、概日リズムの中枢である視交叉上核(suprachiasmatic nucleus: SCN)において時計遺伝子Per2の発現が可逆的に抑制される。一方SCN培養組織にsevoflurane処置(ex vivo application)を行うとPer2発現が抑制されることに加えて、Per2発現リズムの位相が変更された。この反応の差異を検討する目的で、Per2::Lucトランスジェニックラット個体にsevoflurane処置をした直後に組織培養を行い(+sev培養)、ルシフェラーゼ発光のリズムを検出して概日時計の位相を麻酔処置なしのラットからの培養組織(-sev培養)と比較した。もし+sev培養と-sev培養の発光リズムの位相が異なれば、培養組織内の概日時計は麻酔により攪乱されるが、麻酔から解放後に他の組織からの修正により位相は補正されていることになる。+sev培養と-sev培養の発光リズムの位相が同じであれば、培養組織内の概日時計は他組織からの働きかけ無しで位相を修正できることとなる。本研究においては概日時計の中枢SCNに加えて、近年 概日リズムの強力な発信機構を持つことが報告された側脳室脈絡叢(choroid plexus in the lateral ventricle: CP-LV)、第四脳室脈絡叢(choroid plexus in the fourth ventricle: CP-4V),概日リズムのインフルエンサーとして知られる松果体(pineal gland: PG)についても麻酔処理による位相の変化を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①様々な時刻にSCN, CP-LV, CP-4V, PGを培養して、それぞれの組織におけるルシフェラーゼ発光の位相を比較した。すべての組織で培養の調整時刻に依存して位相変化が認められたことから、培養操作がそれぞれの組織で同調因子として働くことが明らかとなった。4種類の組織の中ではSCNが培養時刻による位相の変化が小さく、培養操作に対して概日リズムの位相は安定であった。 ②様々な時刻にPer2::Lucトランスジェニックラットに麻酔処理(6時間)を行い、直後に4種類の組織について培養した。それぞれの発行リズムの位相を①の結果と比較した。SCNはいずれの時刻においても麻酔による位相変化は認められなかった。SCNは麻酔による攪乱から麻酔解除後SCN組織だけで元の位相に回復したことを示す。一方、CP-LV, CP-4V, PGに関しては麻酔処理-培養操作した時刻によっては、麻酔無しの培養と比べて位相変化をしめした。この位相変化は麻酔後1日の回復時間を置いて培養することによって消失した。CP-LV, CP-4V, PGにおける麻酔による位相変化は他の組織からの働きかけにより修正されることが示唆される。 ③ルシフェラーゼ発光の第一ピーク値に注目するとSCNでは麻酔処理により低下するが、1日の回復時間をおいてから培養すると第一ピーク値の回復が認められた。一方、CP-LV, CP-4V, PGに関しては30日の回復時間をおいても第一ピーク値の回復が認められなかった。末梢組織においては麻酔処理により影響が長期間残ることが明らかとなった。以上の結果を論文発表すべく準備している。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のin vivo application後のSCN培養組織からは発光リズムに位相変化が見られないことから、SCN培養組織へのsevoflurane ex vivo applicationでは報告されている位相変化は、培養下での特殊な事象と判断される。sevoflurane がSCNへ直接作用するのでなければ、sevoflurane はSCN外のニューロンに作用しその効果がSCNに波及すると考えられる。SCNに投射することが知られているニューロンに関して麻酔による賦活に関して検討を進めてゆきたい。
|
Causes of Carryover |
当該研究は論文投稿(および査読者から要求される追加実験)がまだ終了しておらず。そのための予算を執行していない。上記を速やかに進め、予算を速やかに執行する予定である。
|
Research Products
(2 results)