2021 Fiscal Year Annual Research Report
低体温療法の分子機序の解明に基づいた甲状腺ホルモンの脳神経保護効果の実験的検証
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19K09336
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
道志 勝 帝京大学, 薬学部, 講師 (30392385)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン / マウス脳虚血モデル / 海馬神経細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
甲状腺ホルモン(TH)は体温調節に関わっており、寒冷環境ではその分泌量の増加により全身の代謝反応を促進させ、熱産生量を増加させることで体温低下を防ぐ。マウス脳虚血モデルにおいて、脳虚血中の低体温が再潅流後の神経細胞死の発生を顕著に防ぐことがわかっている。我々は体温を低下させた際に起こるTH分泌の増加によって脳神経保護効果が発揮されているのではないかと推測した。そこで、本研究ではマウス脳虚血再潅流後の神経細胞死の発生に対する甲状腺ホルモン投与の影響を検討した。はじめに代表的な甲状腺ホルモンであるトリヨードチロニン(T3)およびチロキシン(T4)の投与がマウス脳虚血再潅流後の神経細胞死の発生に及ぼす影響について比較検討した。その結果、T3は脳虚血再潅流後の海馬神経細胞死を増悪させることが判明した。また、海馬における神経炎症を評価するために、ウエスタンブロット法によりGFAP(アストロサイトマーカー)およびIba1(ミクログリアマーカー)のタンパク質発現量を解析したところ、いずれの発現もT3投与により用量依存的に増加することがわかった。つまり、T3は脳虚血再潅流後の海馬における炎症反応を亢進させ、神経細胞死の発生を増悪していることを明らかにした。さらに、その機序の解明を目的として海馬におけるサイトカイン遺伝子発現について検討した。抗炎症性サイトカインのひとつであるTGF-β1mRNA発現を解析したところ、T3投与により用量依存的にmRNAの発現量が低下していることがわかった。つまり、TGF-β1遺伝子発現の抑制による神経保護効果の低下が、T3投与による脳虚血再潅流障害の悪化の原因のひとつである可能性が示唆された。一方で、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1β)のmRNAの発現解析からは、T3投与による脳虚血再潅流後障害の悪化を説明することができなかった。
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